参加者の声 岡本厚  岩波書店 代表取締役社長

丸の内ブランドフォーラム ラウンド 16・2
第3回 10月21日(金)
岡本厚 岩波書店 代表取締役社長
「「知の基盤」を作り続けて」

 

MBFメンバー》

■ 岩波書店の志:知の基盤をつくること、能動的に取り組む姿勢そして他者の内面を知る想像力を養うことー 非常に感銘しました。今後もこの志を貫き、日本の、そして世界の良識としての活動を続けて行ってほしいと、心から願います。 一方、ネットの普及は知識へのアクセスを容易にしたものの、懐疑的な精神や多面的な見方をはぐくむのとは正反対の動きをしていると思います。こうした環境の中で、出版業界(良心的なコンテンツを作り、発信していく人々)が、どのような取り組みをしていくのか、未来に向けてのお話をもう少しお聞きしたかったです。

■ 誇張ではなく日本人なら誰しも少なからず岩波書店にはお世話になっているのではないでしょうか。岩波少年文庫には映画化・アニメ化されて話題になった原作も多く収録されています。分からないことは広辞苑を引き、近傍に並んだ未知の事柄に寄り道をしたりして、いつか通ってきた道程に「種蒔く人」のマークがありました。「文化の配達人たれ」と日本に文化の種を撒いてきた功績は計り知れず、岩波書店が日本の知的基盤を作ってきたことは間違いないでしょう。 そんな大切な岩波書店もまた出版界の危機にさらされていることに例外ではないと聞きました。出版の危機・岩波書店の危機は叡智の危機です。 大宅壮一はかつてテレビの普及を憂い「一億総白痴化」を看破しましたが、既に世代はPCからスマホへ、ネット化の波で一億総白痴化は完遂してしまうのでしょうか。生まれたときからPCではなくスマホな世代。検索の速達性は紙の本とは隔世の感があります。しかしながら、検索で答えを拾って書き写しただけでは考えたことにはなりません。 読むという行為は活字を頭の中に入れてころがす如く、考えることを伴います。「本を読むことで他者の内面に触れることができる。」とは岡本さん。書を捨てることは、自ら考える力を奪っていく。考えの喪失、想像力の欠如が、最近の不可解で痛ましい事件やあちこちで繰り広げられる些細な諍いの遠因となっている、というのは考えすぎでしょうか。 スワイプはページをめくる動作のシミュレートですが、パラパラ読み、斜め読み、本を開くという身体感覚は実現できていません。そしてここが「考える」ということにおいて本という装置の秀逸なところです。 スマホもiPadも持っているしKindleもインストール済。でもなかなかそっちに行けず何かしら紙の本も持ち歩いている。おかげでいつも私のカバンは重いです。

■ 社会的知識の基盤として、読むべき価値のあるものだけを世に問う。結果的に商売として永続する。正反対の道を進む出版社の者として、大変感銘を受けました。「岩波だから」と安心して読まれる評価はNHKなどともあい通じ、実はビジネス界においては弊社も「日経だから」という安心感信頼感をブランドの基軸としているのではと、実感しています。そのわりに毎年の収支という本来は手段である指標が目的化し、経済の指標と言う本来の目的がないがしろにされることも昨今、ないとはいえず、不安を禁じえません。 それにしても、社是を掲げて唱和してるわけじゃなし、この「岩波スピリット」がどうやって、100年も受け継がれてきているのだろう。手練手管に頼らないフィロソフィーの継承に、興味を惹かれました

             《片平ゼミ学生》

 

■ 何よりも講演が楽しかったし刺激的だった。今度本屋に行って夏目漱石を手に取りたいと思う。講演内容だが、知の基盤というブランドの背景があって、すーっと理解できるブランドだったし、すごく大切なことだと思った。毎回好きなブランドが増えて楽しいです。

■非常にききとりやすいお話の構成で楽しかった。

■ 岩波書店様のもつ芯がよくわかった。

■ 出版社という観点で本を選んだことは少なかったため、出版が主体的で積極的で世の中を作っている仕事だとは知らず感銘を受けました。特に、出版はビジネスでありながら公共的なものをもっているというお話からは、マスコミのような社会に対する影響力の強さ・責任感・貢献度の高さを感じました。また社会の情勢に応じて人々の知的欲求の度合いが変わり、出版はそれに応えているというのは納得がいきました。「これから死ぬ、という人たちは何を読みたいか」と仰っていたのは胸に響きました。その視点でものを作る志の高さは、私もどこかでそう考える時が来るように、胸にしまっておきたいと思っています。

■ 岩波書店はこれまで日本人の知的渇望に応えてきた、という言葉が非常に印象的でした。そしてそれは最近本を読まなくなってきた自分にとって耳が痛い話でもありました。うんうん唸りながら長時間かけて読むようなハイレベルな本を敬遠してきたこと、教養をつける絶好の機会である読書から離れてしまったこと、非常にもったいないなと感じます。就活期間にお会いした多くの社会人の方々や母がよく言っていた、「学生時代に本をたくさん読み、そして考えろ」という言葉を改めて思い出しました。社会の多くの人に関わる仕事をする身でもあるため、世の中を知り、他者に対する想像力を養う読書という機会を大切にしていかねばと痛感しました。

■ 出版社の使命感のようなものを感じるお話で、いい意味での頑固さを勉強できたような気がします。

■ 岩波書店さんが大衆の知への渇望に応える、日本の知的基盤を支えるといった明確な理念に基づいて創業以来仕事をされてきたということを知り、「ブランドの芯」に通ずるものを感じて大変勉強になりました。