参加者の声 中川周士氏

第4回   中川周士氏
「和を忍び込ませて世界へ」

■初代、二代目、中川さん、それぞれが全く同じ寸法で桶をつくっても、職人には誰
がつくった桶なのかすぐにわかる。意図して出そうとしていない個性、消そうとして
も消しきれない個性、これこそが究極の個性だ、どいうお話が非常に強く印象に残り
ました。

■和とは滲み出るもの、あえて主張しない、というスタンスに感銘を受けました。秘
すれば花、の極意に触れられた気がします。
桶を通じ、様々なことを学ぶ共に中川さんの人柄も垣間見ることができ、面白かった。
特に、最後の質問に対する回答で、職人とアーティストの違いを説明していたところ
と、中川さんの他者受容の姿勢を遺伝子の例から腹落ちさせて頂いた所が印象的でし
た。

■技術に裏付けられた自信にあふれる熱いご講演でした。
転換点だった「シャープな形の桶」から、どんどん形が自由になっていき、最後は伝
統工芸を「素材と技術にまで解体」するところまで到達されたというくだりに、ただ
ただ驚きを感じました。そこからは日本のクラフトマンシップをベースとしたイノ
ベーションの方向性への示唆もいただきました。もうひとつ、チャレンジの9割は淘汰
されてもよい、そうやって突然変異を起こしていかなければいけないという言葉にも、
強烈な印象を受けました。パナソニックとの意欲的な取組もおもしろいですね。私た
ちももっと新しいことにチャレンジし、失敗し、その中から未来への指針を見つけて
いかなければ、到底生き残れないと思います。

■単純な工芸にとどまらない、アートの側面のお話を伺うことができ非常に面白かっ
たです。特に、海外のデザイナーとコラボすることで突然変異が生じるお話など、こ
れからの日本文化を考えていく中で大切なポイントではないかと感じました。ありが
とうございました。

■中川さんは、ものづくりを楽しんでいるんだなという事が大変伝わってきました。
ものづくりは、限界からの挑戦が大切だと忘れがちな事を改めて気づかせてくれまし
た。進化論、消しきれない個性など、心に残る言葉が大変溢れていて有意義な時間で
した。

■脈々と受け継がれてきた技術を表現していく必要がある伝統工芸と、自分なりの持
ち味、個性を出すことが要求されるアートの融合から生まれる世界、そして今後の伝
統工芸が抱える課題やどう生き残っていくか、など勉強になるお話がとても多かった
です。
イタリアは、伝統工芸では最先端のイメージが、不勉強ながらあったのですが、知り
合いがミラノで体験した話を聞いて、意外に思いました。様々な国が、アートや他分
野とのコラボレーションをしつつ、進展する工業化・機械化による画一化と戦いなが
ら生き残っていくという課題にどう向き合っていくのか、注目したいところです。

■心底、桶がお好きなのだろう、桶づくりがお好きなのだろうと思わせる情熱のこもっ
たお話でした。木工の奥深さを再認識させられたとともに、Woodという素材を使っ
た器や道具が持つ、機能的な素晴らしさだけでなく、独特のホッとする感触や印象は、
恐らく日本人にだけ有効なだけでなく、西洋文化圏の人たちにも与えることができる
のだろうと思いました。それがどんな要素から来ているのか、自分なりに少し掘り下
げてみたいと思っています。

■今回の仮題「和を忍び込ませて世界へ」の意味が最初理解できず、シャンパンクー
ラーと言えども桶の変種デザインであって、「和」そのものではないか、と不思議に
思っていたのですが、お話を聞いてよく分かりました。 確かに日本で使われている
「用のモノ」(風呂用の桶や着物など)を、いくら技術が優れていて、芸術品と言え
るレベルのものであっても、海外ではそれを使う習慣がないのであれば、生活用品と
して輸出する意味は全くないわけですからね。 それにしてもアーティストであり、
デザイナーであり、そして職人でもある中川さんならではのGO ON(ゴオン)プロ
ジェクトなどへの取組みは素晴らしい。 特に家電のデザイナーとのコラボなどは
「テクノロジーを忍び込ませた和の用品」といった感じで新鮮でした。
また、お話の中で「海外のマイスターとかサーの称号を持つ職人はどんなに凄いかと
憧れていたが、むしろ日本の職人の方がレベルが高い」と言われていたのは意外でし
たが、「正に桶屋がそうであるように、伝統をそのまま守っているだけなら絶滅す
る」とか「和のテイストや技術を前面に出そうとすればするほどダメで、むしろ隠そ
うとした方が良さや個性が滲み出てくる」など、以前から学んできた達人の言葉、例
えばとらやの黒川さんの「伝統とは革新の連続」とか世阿弥の「秘すれば花」と相通
ずることを言われていて、どんな領域でも極めた人は同じことを言うものだ、と感心
しました。

■アートと工芸の性質や扱われ方の違いについてのお話を様々な角度から聞いたこと
で、中川さんが大事にされている価値観がより分かりやすく伝わってきました。

■「人に頼まれたものをしっかりと作る」職人の精神性と、究極的におなじものを作
ろうとする中で生まれる「消しきれない個性」というお話に心動かされるところがあ
りました。
「日本らしさ」「その人らしさ」を全面に出すことなく、忍び込ませることによって、
それに触れた人の好奇心をかき立てる、という姿勢は大変参考になりました。
貴重なお話をありがとうございました。

■大変多くの含蓄を得ることができました。直ぐに書けずに申し訳ありませんでした
が、とても良い講演でしたので遅れて一言だけ感想を述べます。「和を忍び込ませて
世界に」は日本の伝統工芸だけでなく、日本が歴史の中ではぐくんできた(日本人な
らば理解できる、日本人しかわからないような)価値の多くに適用できる考え方と感
じました。各国のカルチャーにまず第一合わせること、そこにデザイン×テクノロ
ジー×ストーリーテリングをいかに具現化できるか、衣・食・住の分野でまだまだあ
りそうです。