参加者の声 飯田統一郎「築地の現場から日本人を考える」

2015年10月27日(火)
「築地の現場から日本人を考える」
飯田統一郎 築地まぐろ仲卸「樋長」八代目当主 

 

■ 長く続く事業体の秘訣を詳しく聞けた事が有意義でした。型にはまったプレゼンではなく、生きた現場の臨場感はセオリー通りの代理店型のマーケティング議論ではなく、共感が湧きました。

■ 「食っておいしいまぐろ」というところに、志の高さと目利きとしてのプライドを感じた。大物、上ものなどの表現、仲卸が果たす役割というところから、マグロあっての築地であるということも理解できた。
一方で関西ではマグロはあまり食べられない、彩りとしての添え物というところから、日本食=マグロという位置づけ自体を疑ってみる必要があるのではないか、それが天然マグロなどの海洋資源が枯渇していく中で、何を残し、何を捨てていくのか、また豊洲に移転した後の「築地」ブランドについて考えるための前提となっていくのではないか、と感じた。

■ 飯田さんは「築地村」と表現されていたけれども全くの門外漢である私には場内が豊洲に移転し場外が築地に残るという分断状態がうまく想像できません。場内は移転したとしてもなかなか大変そう。広いけれど狭いという利用者不在の不条理。その理由が設計構想の段階で賛成反対で意見が纏まらず、正に利用者不在のまま図面ができてしまったというのだから組織の統治が難しいのは何処も同じでしょうか。築地にとっての激動の時代ですね。例えが相応しいか怪しいですがふと幕末・維新の日本と重ね合わせてしまいました。折りしも朝ドラの時代背景はその時代。急激な変化についていけない者は凋落し、流れを捉えたものは飛躍の朝となる。船にも乗れば外資系ホテルにも足を運ぶアクティビティー、コアコンピタンスとしての目利き力、マグロにこだわるブレない姿勢。こんな時だからこそ飯田さんのような人が必要です。大政奉還から148年、江戸はTokyoに、京の都は京都として今もあり続けています。これからの築地もTsukijiとして新しい朝の光に包まれていることでしょう。そんな気がしてきました。大丈夫!!

■ 全く未知の世界だったので、大変知るところが多く、勉強になりました。質疑をお聞きするうちに、いつか目利きが機械に置き換わってしまう可能性はあるのか、それは難しいのだとしたら何がバリアなのか、などについて、ご意見を伺いたいと思いました。もちろん私は、機械が選んだマグロより、腕利きの目利きが選んだマグロを食べたいと思います。

■ 飯田さんのまぐろへの半端ないこだわりが樋長、そして築地を支える源泉ではないかと感じた。
まぐろ以外の魚も扱う総合商社的な仲卸も増えてきている中、数ある魚のなかでも「まぐろこそ王道」と信じ、まぐろ一本で商売をする姿勢が、樋長の顧客にも言葉ではない気のようなものとして伝わっているのだと思う。
「まぐろがよければその余韻で他のネタもうまくなる」と講演でおっしゃっておられて、ネタは食べていないが、非常に説得力があった。
築地は市場の豊洲移転により「築地市場」というご神体を失うが、築地ブランドは、市場自体からできたものではないように思った。
築地ブランドはその市場に集う飯田さんのような目利きであったり、魚を扱う職人の技を目当てに飲食等その道のプロフェッショナルが集まり、その凄味が一般の人を築地にひきつけて築かれてきたものだと思う。
市場が豊洲に移転することで移転する業者もあるだろうが、一度築地に根付いたプロ達のネットワークがすぐさま豊洲に移転することもない。
築地は「市場のある街、築地」ではなく「プロの集まる街、築地」として、そうした場作りを着実に進めていくことがブランドを生かすためには重要で、市場はなくともプロの凄さが一般の人々に伝わる場づくりに成功すれば、人が自然と集まる場でありつづけると思う。
その場づくりとして、築地と一般の人との接点には、飯田さんのような本物のプロが出向き、生身のコミュニケーションをとることがものすごく効果的だと思う。(私も一般人として、飯田さんの話には大変感動し、築地に惹かれました)

■ 今回は、講演の前にグループディスカッションを行い、グループ毎に質問やコメントをまとめて提出し、それに答える形で講演を始める、というスタイルでした。
ところがいざ話が始まると、飯田さんの思いが強いせいか、「中卸し」の役割、その存在価値、セリに象徴されるマグロの価格が決まる仕組み、あるべき適正価格、そして魚の王様マグロにこだわる姿勢など、さすが「目利き」の観点で熱い語りが続き、気がつけば終了時間オーバー、という状況でした。
事前のディスカッションで出た質問として、少なくともウチのグループでは豊洲移転に関連するものが多かったのですが、豊洲の環境は理想的とは言えないものの、むしろ今の中卸し業界にとって移転が良い結果をもたらす、とのお話が新鮮でした。 そもそも築地市場は日本橋から移転したものだし、やはり伝統は革新・変化の連続なんだと、納得しました。 いずれにせよ、樋長さんが仕入れた極上のマグロを是非食してみたいものです。

■ 「目利きの仲卸が居るから、生産者側が良い漁をする」が印象に残った。京都などにおける買い手と銘品の関係に酷似している。良い物が出来るには、ちゃんと評価できる人が居なければならない。
でも実は、屑マグロほど儲けは大きい。上物は粗利10%切る。マスプロが席捲する工業の世界に通じるものを感じた。
豊洲の話しを聞くにつけ、守旧派があまりに跋扈することの問題を考えた。結局売り場は狭くなり、デメリットを受けている。抵抗より議論こそが、近代産業の本質と思いました。

■ 狙い:生鮮の流通業界でブランド化している「築地」特にマグロの仲卸について現場の方から直接お話を伺い、他業種での「ブランド」の要素を知る。
内容:
①  築地と「樋長」さんの現状
移転を真直に控え、古い業態が変わり行く家業の場合、代替わりで廃業もあるとのこと
「樋長」の場合、常に顧客(店)との繋がりで今後も活路を見出している。
仲卸が意識するのは寿司屋、日本食の店。 彼等に合わせたマグロを探し、手に入れる。シャリ、店の雰囲気、季節を意識しセリ落とす。
これが築地を通さないと評価されない「ブランド」になる
②     築地の魅力(ブランドの要素)とは
-1地の利 まず、行き易い(銀座の近く、都内、ホテル内のお店に移動しやすい)
-2現場の活気
-3直ぐに消費に繋がる=見た事「魚の姿」が 次の行動「魚・肴を食す」に直結
③     家業
市場での営業権=官庁との関係は移転のような大きな変化がある場合、
ややこしい、既得権が奢りになっては衰退の危険性大
④     まとめ
*内外の観光客を引き付けてやまない「魚市場」の魅力の一端が判った、
それは 地の利、現場の活気、=消費に繋がる内容となる事と考える。
*ビジネスとして扱い量を増やし(多売)で収益を確保しているは、
老舗で無い「すしざんまい(喜代村)」の木村社長、しがらみや慣習に囚われず、消費者を意識した営業形態やメディアへの露出を打ち出し、これまで成長を遂げている。
*仲卸が意識するのは寿司屋、日本食の店。 彼等に合わせたマグロを探す、手に入れる理由=付き合い方、考え方が良く判った。
最後に 食は奥深いものであることが判ったような気がする。

 

《片平ゼミ学生》

■ 天然マグロへの思い、ご自分の仕事、漁師やお客様、築地への情熱と誠実さがとても伝わってくるお話でした。
豊洲への移転に関して、今までの築地の活気や文化がシステムや立地の変化などによって失われてしまうのではないかと懸念していましたが、川上・川下との関係も、目利きというお仕事も、全て人で成り立っていることを実感し、その懸念がはれた気がします。また移転について事業所の良い整理機会とポジティブに捉えていらっしゃったことは少し意外でした。
その他にも普段足を踏み入れることのない仲卸のお話、マグロ専門家ならではのお話などたくさん聞くことができ、とても興味深かったです。ありがとうございました。

 

■ 築地についての知識を得ることができ、またマグロの奥深さに驚いた。飯田さんが売って美味しい魚と食べて美味しい魚という2種類の魚について触れていたが、私が強く思ったことは、食べて美味しい魚を適正な価格でお客さんに販売する商売が結果としてお客さんの支持を得て売り上げにつながるようなサステナブルなサイクルを作る必要があるということである。またブランドが根付く土地とどう関係しているのかという話も面白かった。築地から豊洲に移れば、そこはもう築地ではなく豊洲になるだろう。新しいブランドが構築される過程にも注目したい。

 

■ 事前に飯田さんの紹介文を読んだ時は、オーストラリアで学ばれたというホスピタリティと仲卸のお仕事がどう結びつくのかいまいちイメージが湧きませんでした。でも実際にお話を伺ってみて、お客様のためならば赤字を出してでも納得のいくマグロを仕入れるといったエピソードから次第にその2つが結びつき、飯田さんからマグロを購入したいとお考えになるお客様の気持ちがわかった気がしました。仲卸のお仕事をされている方のお話を生で聞いたのは初めてで、とても貴重な機会になりました。お忙しい中お越しいただき、ありがとうございました。

 

■ 築地仲卸という全く知らない世界のお話を第一線で働くお方から聞けたのは本当にワクワクする経験でした。また老舗の肩書に奢ることなく、追求し続ける姿に感動しました。ありがとうございました。

 

■ ‘築地ブランド’がブランドたる所以を学ばせていただきました。セリの場に実際に行ったことがなく、マグロがどのように評価されるかといった過程はブラックボックスだったのですが、具体的な評価の仕方から適正評価にこだわる姿勢までお話いただけて感銘を受けました。特にこの適正評価について、お客様のニーズに応えるのみならず卸業者に対しても‘安く買いすぎない’ことに留意している点がいわゆる市場競争の原理と異なるため非常に興味深く感じました。そしてこのこだわりこそが仲卸の存在意義でもあり、築地ブランドを維持する上で重要なものなのだと感じました。基本的に回るお寿司しか食べたことがないため、ぜひ人生で一回はそのようなこだわりの詰まったマグロを頂いてみたいです。

 

■ 謙虚かつまっすぐに仕事に向き合う姿勢に大変感銘を受けました。
お客様の利益を最優先にする真っ直ぐな気持ちを持ち、仕事に誇りと情熱を持って取り組めば、それを見ている人の心を動かし、ファンにすることができるのだなあということを実感しました。
樋長さんの何代も続く仲卸たる所以を垣間見ることができ、長く続くブランドとして大事なことを学ばせてもらいました。

 

■ 普段接点があまりない方から直々にお話を伺えたので大変勉強になりました。近頃築地場内が移転することがしばしば話題に上がっていますが、外部の人が「築地の文化が?」などと騒いでいる一方、場内の方の中には移転を現存する仲卸業者を篩にかける良いチャンスと捉えている考え方もあるということが驚きでした。

 

■ 飯田さんの真っ直ぐで潔い姿勢がとても印象的だった。消費者からすると商品の原価を上げてしまう印象のある中間流通だが、商品を適正評価することで市場の正しい役割が維持されており、まさに「仲卸なしでは水産は成り立たない」のだと納得できた。せり人や目利きが一体となり責任を持って仲卸の価値を守っているのは素晴らしいと感じた。
また仲卸という全く接点のない世界は非常に興味深く、特殊だが良好な関係が築かれていると感じた。特に同業者が敵であると同時に仲間であり師にもなり得る点は素敵だと思った。
環境はどんどん変化していくが、今後も築地の価値を守ってほしいと強く感じた。