丸の内ブランドフォーラム ラウンド 15・2
第2回 2015年9月15日(火)
「世界の中の日本人:世界が分かると日本が分かる」
山崎純 外務省 スウェーデン大使 前・儀典長
■ 国際舞台で長年に亘って活躍されている方からご本人の実体験に基づいた「日本の素晴らしさ」「海外に学ぶべきこと」などを伺うことができ大変勉強になりました。
ついつい当たり前と思いがちな日本の特徴(安全性・文化など)が世界的に見ても非常に素晴らしいものであるということを今一度認識するとともに、海外の国々では日本では考えにくい様々な問題を解決することが当たり前のことで、それをベースにして国が成り立っているという現実を知り、日本がそういった国々と渡り合っていくために個人のレベルを上げていくことがいかに重要であるかを学ぶことができました。
■ われわれの先輩たちが築き上げてくれた「日本ブランド」が、これからどういう形になっていくのだろうかという不安を持った。
というのも、ビジネスの観点では日本市場は縮小していき、多くの企業がグローバル展開を志向していく。その流れの中で企業が「日本ブランド」を体現できることより欧米型のパーソナリティを持った人材を重宝するようになると、日本における「良き人材」の考え方が変わってしまい、教育等の政策までもがそれに追従すると今の「日本ブランド」が徐々に薄まっていくのではないかと感じた。
■ 外務省、国連代表部次席大使、儀典長、そして此度のスェーデン大使!と日本の代表としてのご経験からみた日本のウチとソト。納得です。
(粗)単一民族・単一国家である日本こそ、世界的に見れば少数派。それゆえ他国からみればオドロキの国だったり、残念な国だったり。「日本を知るために日本でないものを知る」。ソトに出てわかる日本の良さ。「日本人はコーランの教えを実践している」とはアラブの国の大使の感想と聞けばちょっとは親近感がわきますね。
「他人からの尊敬は行動を通じて勝ち取るもの」。今や国ではなく個人のつながりが重要になってきているから「最終的には、個人の力量を磨くことが重要」と山崎さん。以前お話を伺った松浦さんも緒方さんも同様のことを仰られていた様なおぼえがあります。
今まではソトに出て行く日本人は(パックツアーの団体さんはともかく)それなりの覚悟をもっていたと思います。2020年を契機として、ウチに多くのお客様が訪れることでしょう。もうひとごとではありません。人と人とがすべてを越えて理解しあえるために何が大切か。襟を正し、覚悟を決めて、でも寛容に、我々一人一人が日本代表としてふるまえてこそ真のグローバル化「ザ・プライド・オブ・ジャパン」の完成です。
■ 個人や民間の団体同士の直接的な交流が盛んになった現在、やはり国という枠組みは依然として重要なのだと感じる。知らない相手を判断する上で、国籍という属性は、よくも悪くも大きな指標になってしまっている。そのため、日本という国のブランディングを行うことは非常に大事であり、日本の国民や団体が、海外でどのような扱いを受けるかに、大きく影響を及ぼす。
安倍首相のスピーチライターをなさっていた谷口智彦氏が、学生によるインタビューの中で、「日本の外務省は、国益を担って日本のマーケティングをしている組織でもある」とおっしゃっていたことを思い出した。目に見える効果で出にくいだけに、時折批判の対象となる文化外交や国際協力も、その一環だと感じる。同時に、国民自身がマーケティングの主体であることも事実だと思う。我々一人一人が、山崎さんがおっしゃったような様々なポイントに留意する必要があるだろう。
中でも印象的だったのは「日本は異なるものとの共生を学ぶべき」というご指摘である。私自身の実感として、日本人は排他的だという認識が外国人の間では強いように思われる。実際、日本人は、自分たちが持っている価値観が、世界共通の常識だと考えている部分も多いような印象がある。外国に、このように認識されていることは、日本にとって不利益であるし、日本人にとっても、外国に対する無用な嫌悪感を抱く一因になる。異文化への寛容性は、オリンピックを目前に控え、観光客の増加も見込む日本にとって、重要な課題になるだろう。
■ 人もブランドだ、というのはMBFの長年の主張ですよね。それを全く畑違い(外交)の世界から、経験を通じて語られたので、非常に入りやすかった。
くるま+京都+秋葉原。こんな多面なアイデンティティを持った国民は、ほかのどこにも居ない。技術・知性+伝統・おもてなし+アイドル・エンタメ。今、世界からいただいている評価を子どもたちにつないでいくことが、我々の責務であり矜持であろう
■ 今の仕事をするきっかけとなった小学生時代のお話に感銘をうけました。日本という国を世界に知らしめたいという想いが原点であり、原動力である点、自分自身にあてはめて、今後の仕事の中に活かしていきたいという想いをもちました。
そのあたりを講義の中で詳しくおうかがいできなかったのが心残りとなりました。
■ 外務省、大使という外交のプロの視点からの日本、海外の見方は非常に興味深かったです。また国連という組織の内情なども教えていただき、国際関係に改めて強い興味を持ちました。
ただ1つ1つのメッセージに対して、もう少し実体験に基づいたエピソードなどが入っていると、もっと理解が深まったように思います。
■ 外務省 前儀典長 スウェーデン大使 山崎 純
講演後レポート
*日本を知るために日本以外の国、地域や機関を見る
1
そもそも国とは
*国の定義は1648年のウェストファリア条約を端とし、
国の単位という概念が出来た
*言葉・宗教・文化 別のものを内包している国もある。
日本はその違いの極めて少ない国。
アメリカでは奴隷として連れてこられた人もいる、
そのため平等化への取り組みがあり、日本も学ぶべき、彼らはアシミレーション(assimilation「融和」「同化」)してる。
*東京には150もの国と地域の大使館・代表がいる
国際的な地域で接する機会を持った。
2
日本という国の特徴
季節感が明瞭にある
*インドネシアに赴任していた時、雨季と乾季しか無い、
徐ゝに時間の感覚が薄れて行く感じ、出来事の記憶が季節と連動している。
これは日本のアセット(ASSET財産)である
② 日本人は日本の文化を改めて勉強すべき、
例えば食べ物への拘りはフランス料理の
ヌーベルキュイジーン(Nouvelle cuisine 新しい料理)は
日本料理の影響が大きい
欧州にも日本の俳句楽しむ「文化人」がいる。
③ アラブの大使が「日本人こそコーランの教えを実践している」とのこと。
嘘を付かない、誠実。
④ バランスと調和 人と同じが良い、
出る釘は打たれる
コミュニケーションについて
① 中身を正確に伝えるための言葉が大切
② 英語がデファクトだ、英語は不規則、簡単では無い
③ ロジック・論理的な説明でないと駄目
多種の文化の中で誤解を生じさせないためには論理は大切。
私の感想・意見
実体験から発言された外から見ると自分の国が見えるという内容は、比較文化論として説得力があった。
企業も自らを想うに「外での体験、外からの視点を持ち、知見を得れば、分析・
思索に助力となる、これは直ぐにも実践強化が出来ることかと考える。
また多様な人々に接するに、つい忘れがちな当然の心掛けも真摯に語られ
外交官として、だけでなく大人の、必須要素を改めて知る事が出来た。
以上
《片平ゼミ学生》
■ 主に海外で活躍されている話しを伺い、海外から見た日本とはどのようなモノなのか知ることができた。その中で、日本人とはどのような民族なのか、どのような特徴をもっているのかということについて考えさせられるよい機会であった。
この問題について、グループ内でも結論がでなかったが、これについては質問をしてみたいところであった。
■ 日本製品、文化だけでなく、日本人の謙虚さ、勤勉さ等の姿勢を含め、 ‘日本’をブランドとして発信するという視点からお話していただき、非常に興味深かったです。
ただ途上国で日本が未だ根強い人気をもっているという点に関して、たしかにインフラ輸出や経済協力の経験から日本は好感を得やすいとは思うのですが、一方で中国のプレゼンスが如実に高まっているようにも感じます。また外交上での日本のプレゼンスは依然高いのかもしれませんが、先進国(欧米)においても、自分が旅行・留学した際には民間レベルでの日本のプレゼンス・人気はあまり高くないように感じてしまいました。
だからこそ、「10年後の日本ブランドの説得力を作るのはあなた達です」という最後のお言葉には考えさせられるものがあり、BRICs, NIES等の新興国の存在感に負けない、’日本’ブランドを発信できる者になりたいと思いました。日本製品、サービスで信頼や存在感を高めるだけでなく、日本人として存在感を出していければと思います。
■ 日本人の海外との関わり方として、大抵どこかで聞いたことのある話でありながらも、山崎さんの実際の経験に基づくお話として他とは異なる重みを感じました。
最近テレビ等でやたらと日本人を自画自賛する姿勢が目立ち、時に恐ろしくも感じているのですが、その中で適切な自国愛や誇りを持つことについてお話を伺う中で考えることとなりました。
■ 外務省などの経験をもとにしたお話は非常に興味深く、勉強になりました。
また一般企業でもそのまま求められる考えだけでなく、国や国連としての立場があるからこその考えもお聞きすることができ、勉強になりました。
■ グローバルに活躍するためには自国や相手方のカルチャーの勉強が欠かせないということを再確認できてよかった。カルチャーの理解は自分が大学生活で最も力を入れてきた勉強の一つなので、自分の大学生活が正当化された気がした。
■ 日本らしさの要素として季節感を挙げられたことについて、非常に納得がいくと同時に「日本人でよかった」と強く感じた。最近の少し冷たくて澄んだ空気や夕方の空の暗さは私に秋だなと感じさせ、感情を動かす。思い出にも必ず季節感がある。こういうものがない世界は考えられないし、お陰で豊かな暮らしができているのだと思った。
また日本人の気質はコーランの教えを忠実に守っているということについて、驚きがあった。日本人の思考習慣の根底には仏教や儒教の教えがあると思っていたが、それはコーランと似通っているのだろうか。宗教間で共通の視点があることは興味深いと感じた。
海外の日本に対する誠実さや謙虚さのイメージは現代の日本人の先輩が築き上げてきたものであるから、その恩恵を受けながらそれを失わないように私たちは世界に出ていかなければいけないと思う。
■ 国の概念やコミュニケーションなど、普段生活の一部になっていて意識しないでいることについてのお話を伺えて、これらのことを考え直す大切な機会になりました。日本人はコーランの教えを実践しているなどということは考えたこともなく、様々な国の人とお仕事をされている山崎さんならではのエピソードを数多く聞くことが出来て大変興味深かったです。お忙しい中貴重な講演をありがとうございました。
■ 文化によって価値の置き方が異なるという、山崎様の実体験を基にされたお話が、一番印象的でした。私もインドネシアでの居住経験があるので、現地の人々と日本人との時間感覚の大きな隔たりは感じていましたが、その要因が季節の有無にあるという観点は今までになく、面白かったです。
■ 国連などで日本の代表として活躍してこられた山崎様の、日本人としてよりもまず、一人の人間として評価してもらい、信頼してもらうべく努力が必要だというお話は印象に残りました。自らの人間性の奥深さ、面白さから日本の株を挙げられるような人間になりたいと思いました。
■ 以前から山崎さんの講演を聞きたかったのですが、今回しっかりとお話を聞けて非常に楽しかったです。日本人とは?という疑問は常に問い続けています。山崎さんもこの疑問についておっしゃっていて共感しました。
■ 山崎様のお話、とても楽しくきかせていただきました。「自国の誇りを持ちつつも、人としての交流を重んじる」そして「一人一人が魅力を持つことが日本という国の魅力につながる」という山崎様の価値観にうなずいてばかりでした。日本人か、アメリカ人か、はたまた台湾人か。ある種のアイデンティティー・クライシスに陥ってしまっている私ですが、まずは一人の人として、「佐藤雅士」としての魅力を見つけよう、と前向きな気持ちになれました。