丸の内ブランドフォーラム ラウンド 15・2
「日本のブランド:幸せの貯金箱をどうつくる」
MBF 片平 秀貴
■ 弊社では現在”Quality with Surprise”をブランドの理念としてかかげているが、これが「定番+驚き=うれしさ」と相通じると感じた。これを実践するのは難しいが、言葉にして常に意識していくことが重要なのではないだろうか。
とはいえ、相通じるということは、この言葉にはユニークネスがないという意味でもある。ここに、弊社ブランドの弱さ、特に日本的コンテクストを離れた場合にグローバルで戦えない弱さがあるのだとも認識した。
世界から見た「日本」に関して言えば、日本ブランドの良さは、どんなときにも手を抜かず洗練を究めようとするところだと考えている。これは片平さんの挙げられた、誠心誠意や、顧客に貴賎なしにもつながることだと思う。
ただ、顧客と一体という点については疑問もある。ガラパゴス化といわれる現象の背景には、作り手側が考える洗練や品質を追求するあまり、顧客の視点にたたなかったことがあるのではないか。単にコミュニケーションの問題ではないし、「一体」を強調することでコミュニケーションの努力を放棄したとも言える。
顧客にとっての価値を考えること、それが顧客にとっての「驚き」につながるのだと考え、常に顧客を中心に考えていきたいと改めて感じた。
ここからは蛇足ですが、個人的には「有閑階級」は文化の発展のために必要な存在だと考えています。「無駄」の中からしか本当の文化は生まれないからです。事実身分社会だった平安時代や江戸時代に日本的な文化が生まれています。また、ノブリス・オブリージュの考え方も重要でしょう。政治の貧困にもつながっているのかもしれません。
■ 古来からの日本における考え方が、改めて素晴らしいと感じました。
またこれが、現在のブランドや企業の考えた方に深い影響を与えていることもよくわかりました。
日本にできること、日本の素晴らしいこと(国内にいては感じなくても、旅館や公共交通、マナーなどが実はラグジュアリーなサービスであること等)をアジアも巻き込んで発信出来れば良いととても思います。
■ 最後のQ&Aの中で「日本にはラグジュアリー・ブランドはいらないんじゃないか。なくてもよいではないか。」というお答えがあり、大きな胸の閊えが取れた気がしました。周囲でも多くの人が頷いていたのがとても印象に残っています。私は「dyson」というブランドに「してやられた」という感想を持っているのですが、dysonなどは日本発ブランドの一つのモデルになり得るのではないかと考えています。その、最近の考えとも符合していたので、最後は気持ちよく帰ることができました。
■ 1.いつもながら、片平さんが語ることの中に、何度聞いてもなるほどと勉強になることが有り、加えて幾つかの新しさや興味深い知見がある。
2.各部ごとに、気づいたことの一端のみ下記する。
①「目利きが名声をつくる」というのには若干の異論がある。普通の人が名声をつくってくれるので、目利きはきっかけ作りをしてくれるのではないだろうか。「定番+驚き」という基本構造は、当たり前ながら実践の場では大変難しい課題である。
②ヴェブレンの名は久しぶりに聞いた。日本と対置する対象としての意味が今一つ胎に落ちていない。もう少し考えたい。
③トヨタのピックアップ・トラックはゲリラに盗まれた、トヨタとしては「悪用」されている様子で別な写真を探してほしい。確かに善用悪用を別にすれば、どこでも使えるもの、という例ではある。実は、TOYOTAマークがゲリラ使用の車で目立つので、標準仕様からオプションに変えたなどという歴史もある。
④世界から見た「日本のブランド」については、改めて議論したい。最終講義が議論の場になると有り難い。
■ 「和を以て貴しと為す」 2015年のブランドフォーラムでこの言葉と邂逅するとはたまさか思いませんでした。はたと思い出して“マイ ドキュメント”フォルダーの奥底を漁りましたところ、このことばを書き留めた大昔のメモがでてきました。
「全ての職業に貴賎なし」この言葉は、長く別の人のことばだと思い込んでいましたが、鈴木正三『萬民徳用』が恐らくオリジナルなのだと気付きました。
「有閑階級の理論」もまた十分に古典、記憶の彼方に遠ざかっていたものを呼び戻してくれました。『下流社会』の三浦 展さんが雑誌「アクロス」編集長だったころ、さかんに引用していたのを思い出しました。
ヴェブレンが有閑階級を憂いていた1899年の遥か前から万民平等を説いていた民族・国家がアジアの辺境にあったとは!面白きと、珍しきと。
ともあれ、日欧の古典を紐解いて欧米と日本、過去と現代に照らし合わせての比較論を展開し日本ブランドの進むべき未来を示唆して見せた、片平先生の名キュレーターぶりに感激。アカデミックな面白さ、断片的な知識が繋がっていく快さを感じた2時間でした。実務では厨二病的と貶められ封印していたわが闘争(笑)に思わぬ援軍を得て、もう一度この古典たちと向き合い私なりの新たな発見をしてみたいと思います。
■ 一流ブランドと庶民的なブランドで売価が異なる要因は、品質や使いやすさなどモノ自体の価格差とブランド価値があると思われるが、◯◯社のモノを持っている、といったいわばステータスは、今では有閑階級に限らず一般人でも普通に持っている。
また、海外に限らず日本人の殆どが一般的に持っている感覚でもあると思われるが、日本のブランドは必要以上に高額な価格設定はしない、という点がおもしろいと思った。
西洋が主導で周りの反応を気にする東洋人の気質はこの先も変わらないのであれば、せめて西洋人にジャパンブランドやアジアブランドを買って名声を得て認められ、東洋人も自信を持って東洋ブランドを持つ時代がきてほしいと感じた。
■ 確かにアングロサクソンには”Winner takes all”の発想が根強いと思う。みんな平和だから幸せなのではなく、人を泣かせてでも殺してでも、より多くぶんどってこそ幸せになれる(そもそも異教徒は人ではないので、どう扱おうと構わぬ、と)。
さすがに彼ら自身、限界に気付いてると思いたいが、よく似た「根こそぎぶんどり文化」が、お隣で10億人規模で台頭していることには危機感を覚える。あの方々にとって「世界制覇」は決して絵空事ではない。歴史的に、そうやって成り立ってきた国家なのだから。
さて、日本がアジアを巻き込んで、日本らしいブランドや企業理念を世界に提案していけるか?理想的ではあるが正直、難しいと思う。Made in Japan「だから」世界が欲しがる商品はたくさんある(車、電機、おもてなし、カワイイ、等など)。でも、Made in ○○にアジアの各国を当てはめてみると、「○○だから欲しい」と言えるものは思いつかない。せいぜい特産の食品か酒。特に工業製品は「○○でもいいや、本当は不満だけど」の域を出ていないのではないか。
なんだか脈絡なくなってきましたが、Pride of Japanは今期も続けていきたいと思います。よろしくお願いします。
■ グローバル化の中で、日本から海外に進出する企業は急速に増えているが、日本のメーカーは企業理念の中に「和」の精神が入っていることが多く、欧米型の利益の追求が不十分である。これは弱点でもあるが、逆にアジア圏では武器となりうることがよくわかった。また、それを実践する中で、現地にあったローカライゼーションは必要なわけだが、崩してはいけない企業理念の重要性も理解できた。
■ 片平さんが開口一番『今まで20数回も聞き続けている人がいるので、私の番はいつもスライド作成に苦労しますが、定番7割+新しい驚き3割を死守して作りました。』と言い訳されていましたが、聞いて見ると、勿論定番の話はあったものの、ヴェブレンの「有閑階級の理論」の印象が強烈で、驚き7割というイメージでした。
特にピーサブルな“原始未開時代”から“野蛮時代”になって生産余剰が生まれると好戦的・略奪的になり、「社会的地位は戦利品(トロフィー)で決まる。」とか“産業時代”になると「トロフィーに代わって富の所有が地位を決める。」とか、西洋人の価値観(勝ち観?)の根源が良く分かった気がしました。 また“ブランド”とは「働かないことを見せつけること」というのも驚きです。 正に「昔勇敢、今有閑」ということですね。
思うに、西洋と東洋、特に日本とのメンタリティの違いは、ユーラシア大陸なら気候が同じフロンティアが東西に大きく広がるので、移動して開拓する余地も大きいが、南北に細長い島国である日本では定住して農耕する方がリスクが少ない、という環境条件から来ているのではないでしょうか。
いずれにせよ、狭い村社会で生きていくしかない日本で、より良く生きる為に生まれた、西洋のGREEDな生き方と対極をなす「和」や「利他」といった思想こそが、グローバル化の進展で狭くなった地球村で皆が幸せに生きる為(FREEDな生き方)のトーチになると思われ、日本発のブランドもそこから生まれるべきでしょう。
■ 今まで、世阿弥の話などすこし抽象的で理解が難しかったが、たくさんの参加者と共にブランドとはなんなのか?ラグジュアリーなもののみがブランドなのか?といったすこし自分の身の回りにあるような話の次元にまで下げてブランドについて考えることができて、本当に有意義な時間だったと思う。セミナーの後自分で考えて思ったことがあって、①シマノ②エルメス、の2つのブランド展開があるとふと思った。ここでのブランドは高額な製品も含む。①シマノのロードバイクのコンポーネントについて、デュラエース、アルテグラ、105のように製品のランク付けが上手にされていて、ロードバイクを乗る人はだれもが最上級モデルをほしくなり、そしてそれは同時に最高級のレベルの製品である。②のエルメスはその会社自体にブランドをもたせて、入門モデルとか入門の製品はあまりない。①②のやり方があると仮定すれば①の方法こそ日本の企業はうまく使いこなせると感じた。
《片平ゼミ学生》
■ 今回の講義、並びに社会人の方々とのディスカッションを通じて、人々に愛される強いブランドを育てることと、短期的な利益を追求することはトレードオフの関係にあるように感じた。ただ、ブランドの醸成期に利益を上げることが出来ないという訳ではなく、会社の規模を不必要に拡大させないことで一人当たりの取り分はある程度確保できるのではないか。
では、大企業がブランドを育てることが難しいのかというと決してそうでもないだろう。ディスカッションの際、大企業に勤められている方々はやはり短期的な利益を重視する論調をなされていたが、事業の持続性を考慮するとブランディングは欠かせないものであると思うし、寧ろ大企業は部門を分けることで短期的な利益の追求とブランドの醸成を同時並行で行えるという強みがあるのではないか。その際、部門ごとに雇用形態を変えるなどして社員のインセンティブを高めることが重要であるだろう。
■ 個々のブランドではなく、日本と欧米のブランドの比較という視点でのお話しは、先生もおっしゃっていた通り、極端な面もあるように感じましたが、その一方で納得できる面もあり、非常に勉強になりました。また「日本」というブランド作成の視点は、今までもあったものだとは思いますが、改めて意識する機会となった点もありがたかったです。
■ 日本と欧米のブランド論を文化的、歴史的背景から比較したことで、日本のよさ、「日本らしさ」というものを再確認できた。海外経験が長かったこともあり、out-goingでexpressiveな海外と比べてどうしても日本は控え目で、視野が狭いといったネガティブな印象を払拭することができた。そして今後日本は、そういった日本的な考え方や意識をいかにして世界に広めていけるか、というコミュニケーション面での課題と向き合っていかなければならないことを改めて痛感した。
■ 今回初めてMBFに参加してみて、2時間講演形式だと思っていたので、社会人の方とグループディスカッションをするという貴重な機会を与えてもらえることにまず驚きました。
内容に関しては、「世界から見た日本」の3つのポイントが、確かにその通りだと思いました。誠心誠意という理念は、特に百貨店やデパートの靴売り場などで感じられます。少しでもはき心地が悪ければ何度でも別のサイズや少し違ったデザインの靴を新たに出してきてくれて、こちらもその丁寧な対応に感謝しながら買い物が出来ます。そして、従業員同士や顧客と一体となることを重視したチームワークは、電化製品店で特に身に覚えがあります。その製品の専門の店員さんが決断をするまで様々なアドバイスをしながら購入の過程に付き合って下さり、先日もコピー機を購入する際に頼らせていただきました。また、「顧客に貴賎無し」という点も、買い手が親であっても私であってもまったく態度を変えずに接して下さる店員さんばかりで、まさにその通りだと感じました。
興味深い講演をありがとうございました。
■ 何度も伺った話に加え新たにヴェブレンの話が絡まってきて、整理がつくようなまだ納得できないような、咀嚼をしている段階です。特に日本固有の考え方や、根底の思想といったものは講義の文脈ではとても新鮮で納得感がありましたが、ほんとにそうなのか?という疑問も一方で大いに残っています。今後様々な例と接する中で整理していけたらと思います。
■ 日頃片平先生のゼミ、あるいは社会人ゼミで学んでいることとかぶる部分がありましたが、今回一番印象に残ったのは、日本と海外との比較論でした。
日本は人に寄り添う方向の良いものをつくる、大衆が8割喜ぶものをつくるという顧客に貴賎なしという精神性をもとにしたものづくりを行っているという論は、海外とのラグジュアリーブランドと日本ブランドの根本的な違いを説明しているようで、説得力がありました。そして、だからこそ、日本が海外、特に欧州に対抗してラグジュアリーブランドを作る必要はないんじゃないかという先生の意見にも賛同できました。
■ 今回は欧米と日本の消費のあり方の差異を社会的、歴史的側面で紹介いただきました。欧米では絶対的な富の追求を奨励するのに対して、日本では古くから儒教・仏教の影響を強く受け、富よりも徳や和を重んじる文化がある、との話がありました。この日本固有の文化をビジネスでも活かして、誠意をもって、質の良いものを皆の手に届く価格で提供するのがmade in Japan だという話はとても共感しました。しかし、実際に同じテーブルでの討論のときに、同席していた企業の方々と話している中で、モノを売る企業とサービスを提供する企業では日本色の出し方も異なるし、モノを売る企業は海外で日本色をどうアピールしていくか悩んでいるようでした。
今回のフォーラムでは日本の特色・強みを再認識する傍ら、日本初ひいてはアジア初のブランドを世界に輸出することの難しさも実感しました。
■ ディスカッション後のコメントで片平先生がおっしゃっていた、「理念を持って手ぶらで行け」という言葉が印象的でした。日本らしさや企業の特色を理念として維持しつつも、各地方のニーズに合わせることがグローバル化に当たっては重要なのだと感じました。
■ 日本と海外の歴史を比較する中で、日本は古くから顧客との長期的な関係を重視する方針を続けてきたのだとわかり、日本企業には今後もその方針を貫いてほしいと感じた。その際に問題となるのは顧客とどううまく対話するのかという点だと思うが、老舗ブランドはどのようにして顧客との対話を成功させ信頼を築いていったのかという過程を調べ、参考にしたいと思った。
■ 定番があってこそ新たな取り組みが消費者に響くというお話の中で‘定番の定義とは何か’を考えていました。同じテーブルに出版社の方と以前自動車メーカーで働かれていた方がおり、ブランドの比較指標を作り出している方とブランド=マーケテイングの一手段としてそれを全く信頼していなかったという両者のお話をお聞きする中で、ブランドを作り出す企業側は何を以て定番と判断すればいいのかなと疑問に思いました。その難しさから指標が生まれたのだと思いますが、実際の消費者との乖離も大いにあるように感じました。また‘シンプルで変な強い理念’があれば海外でも手ぶらでやっていけるというお話も印象に残りました。
■ 今回の講演の中で強く印象に残っているのは、日本の精神性とアメリカの精神性の対比です。個人としては、人間の欲求は根底の部分では通じており国による差異は思っているほど大きくはないのではないかと思っていますが、その表層の長い間に培われた文化についてはそれぞれ独特なものがあり、ブランドについて考えるにあたり、その中でも日本人の精神性が世界にどのようにうつり、またどのように評価されていくのか、日本企業における成功例の中に日本企業としてまたは一企業としての精神性は貫徹して宿っているのか意識する場になりました。
■ まず初めてのMBF初参加の感想を一言で述べるならば、とても新鮮な学びの体験だったというところです。私たち学生を含め、年齢や職種・役職などバックグラウンドの異なる社会人の方々が一堂に会し、意見を交換する場は初めての体験であっという間に過ぎていきました。片平先生の講演は、第一回ゼミで聞いた話の中に、新しい話もあり、まさに「定番+驚き」の実践で、非常に参考になりました。一つ悔いの残ることは、その後のテーブルごとの意見交換の場で自分自身あまり発言できなかったことです。その際社会人の方々が経験に裏打ちされた価値観の下、自分の意見を堂々と発表されるのを見て、自分の経験不足や知識不足を痛感しました。今後は日頃から様々な情報・知識に触れ、自分なりに考えることしていこうと思います。非常に刺激のあるMBFでした。
■ 欧米と日本の根底にある文化的な考え方の差から、世界視野で日本のブランドを見たときの日本らしさや強みがわかり、今後日本ブランドを世界に発信していく上で何を強みとしていけばよいのか、自分なりに考えるきっかけになった。国によって歴史的背景や文化が違うからこそブランドにもその国独特の個性が生まれ、その個性や理念を追究しながらも、進出先の国のニーズにどう応えていくかというバランスが難しいと思った。
社会人の方の近くで、企業で働く中で得た経験やそれに基づく考えをふまえた意見をお聞きすることができて興味深く、非常に勉強になった。またそうした方々との議論において自分も学生としての意見を持つことの重要性を感じた。
■ 日本のモノづくりが「客に寄り添う」という理念のもと、続いてきたことを知った。また、その理念を持つ続けることが海外に出ていく上でも重要となることも分かった。しかし、この話を聞き思い浮かんだのは日本の携帯などに代表されるガラパゴス化である。これは、日本人に寄り添いすぎてしまったが故に引き起こされた事態と言えるのではないだろうか。海外に出ていくのであれば、寄り添う対象を見定めなければならず、理念を持ちつつも進出先の状況を把握することが求められると考える。
■ 前回のゼミの授業で扱った “The Theory of Leisure Class”に描かれているものを中心にアメリカ的ブランドのあり方と日本的ブランドのあり方の根底にある違いについてお話を聞けて、こうした考えかたの歴史的な違いや、「日本発」だからこそのブランドのあり方について考えさせられました。世阿弥の時代から大切にされている考えの中でも、特に、高品質の物を手の届く範囲の値段に抑えてより多くの人に使ってほしいというあくまでお客様が中心のところが日本のブランドのいいところだと再認識できました。1950年代の日本製の服と言えば「ワンダラーブラウス」だったアメリカでは考えられないですが、現在ではメーカーズシャツ鎌倉や三陽商会(「100年コート」を8万円ほどで販売)が純日本製だからこそ出来るその縫製の良さや品質の良さを売りにアメリカでも活躍しているという新聞記事を読んで、まさに、先生のおっしゃっていた「日本発」なりのブランド戦略が生きてきているなと思いました。日本製がなかなか欧米で認知されていなかったのは、その品質や理念ではなく、日本なりの価値観というものを現地の人に理解してもらえるようなコミュニケーションスキルに問題があり、それを克服すれば十分世界で通じるブランドを発信していけるのではないかと自信を持ちました。今まではブランドと言えば、「エルメス」や「シャネル」と言った「十年憧れてやっと買える」値段設定のメーカーを想像していたので、日本だからこそ出来るブランドという可能性を考えるきっかけになりました。
■ 定番+驚きがうれしさの素になることがよくわかりました。ゼミ生のためだけの講演ではないけれども、新たな事例とともに前回のゼミで先生が取り上げたシマノや虎屋の例や、ヴェブレンの本のポイントを復習することで、既知だと思っていたことについても新しい認識が生まれました。日本にラグジュアリーブランドは作れないのではないかという問いに対して、先生が「そういうものを作らなくたっていいじゃないか」と答えたことがとても印象的でした。個別の商品のライフサイクルがどんどん短くなってきている今日でも、日本にはちょっと背伸びすれば手が届くくらいの良質な商品を作ってほしいと思いました。
■ 歴史的観点から見た日米の思想が明確に対照的であることに衝撃を受けた。ヴェブレンの記述した競争的な米国社会の状態は十分納得できるものであり、自然な流れのようにさえ感じられる。一方で日本の慎み深い文化もまた、日本人なら誰もが「和を以て貴しとなす」という文言を耳にしたことがあるように、私たちに染み付いていると思われる。このどちらにも違和感を抱かなかったため今まで気付けなかったが、両者の違いは大きな発見だった。
ここで対比された日本の特質は好ましく、ほぼ理想的なのではないか思う反面、禁欲や平等の精神の実現の困難さも感じた。米国の特質は、歴史を考えるとむしろ西欧のものなのではないかと疑問に思った。
■ 定番7割に加えた驚きの3割が非常に興味深かったです。特にマツダがかつては僅かしかいなかった理解者を人事の軸にして、彼らが未だにその座に就いているという話が、義理を重視する日本人の感性を表したものだと思い、関心を持ちました。しかし、そういった「恩義」を重視する傾向は、裏返せば年功序列に代表されるような流動性の低さを示すものであり、それは若い世代が革新を生み出す可能性を阻害しているのではないかと思いました。
■ 質問の時間に、日本はユニークなのかという声が挙がっていましたが、「誠心誠意、心底から」もてなすという理念、従業員と一体かつ顧客と一体というチームワーク、顧客に貴賤なしという考え方の3つが特徴的な日本の商売姿勢は、十分すぎるくらいユニークなものだと私は思います。私は小さい頃にインドネシアに5年間住んでいた経験がありますが、それと比べても、顧客のことを第一に考えてこの上なく細やかな気遣いをするという姿勢は、日本に特有のものだと思っています。
■ 定番+驚きの議論はとても共感することができました。自分の好きなブランドが全く今までとは違う商品を販売し出すと違和感を感じることがまさにこれにあたると思います。
「用意された答えはない問いかけることが無印だ」という無印の考え方がとても印象的でした。
■ ブランドとは人の頭の中に宿るものだと改めて認識した。日本と欧米におけるブランドの違いは、その文化の歴史的な成立過程にあるという紹介は斬新に感じた。古くからの商人の気質として、日本には「人に寄り添う」という特徴があるように思える。それに対し、欧米では「モノに寄り添う」という考えが主流なのではないだろうか。日本製品は「安くて使いやすい」が売りである。そこを生かしたブランド育成が求められているように感じた。
■ 今まで学んできたブランド論を復習するとともに、日本とアメリカの文化の違いのお話やそれに関する議論など、普段なかなか議論しない話題を話し合うことができてとても良かったです。ただ、大枠で見るとそのような違いはあると思いますが、やはり例外というのも多いため、議論をする軸であったり、グループの分け方というのも重要であるとも感じました。