参加者の声 藤原清志氏 (マツダ株式会社 執行役員)

■ 相反する課題を直交軸において、トレードオフではなくブレークスルーを目指す、という手法は、“いいわけの方向性”を可視化する意味でいろいろ転用できると感じました。

 

■ 危機が革命を誘発するというが、マツダもこのセオリーに違わず2001年の大リストラという一大事から残った全ての従事者の意識の中にこの革命の芽が一斉に芽吹いてきたのであろう。
「どげんきゃせんといかん」と言って宮崎を一時変革させた某知事がいたが彼は一期でその役目を投げ出した。折角、その革命の芽が大きく育とうという時に、である。今も頑張っていれば宮崎ブランドは揺るぎないものになっていたかもしれない。残念ながら、今、宮崎の話題が出ることはほとんどなくなった。
一方、藤原さんは、世界で生き残るために、日本の製造業の将来あるべき姿を見通し、そこからマツダの現状、ポジションを分析したうえで、未来にあるべき姿を頭に描いた。
そして、既存のものを生かすという改革論をすべて排除し、本当にあるべき姿(目標)に向かって、すべてを白紙に戻し、一から図面を引きなおさせた。それなりの実績を積んだプロたちを前に、こんなことは、早々できるものではない。しかし、2001年の一大事があり、経営層から従業員まで危機感を共有できていたからこそ、この難題に取り組むことができたともいえる。とは言え、人は、過去から築き上げた経験、実績という自信を否定されたくない、またどこかで楽をしたいもの。藤原さんの貫き通す意思と忍耐と寛容の精神があったからこそ、花が咲き、実がなったということであろう。
ブランディングを行う際、多くの担当者がぶつかる壁は現状を変えるということである。革命どころか、改革すらできない企業も多くあると聞く。よって、ブランド担当者は、夢だけを描き、魂のないおざなりのブランドブックを作り、思いも程々に小手先で変えたデザインマニュアルを作って終わり。なんてことで満足してしまうことが多いらしい。こんなことでは、藤原さん流にいうと「こんな日本企業に将来はない」。やはり企業各社の担当に藤原さんが乗り移ってもらうしかないのか。本気度がいかに大切か大いに学ばせていただいた。

 

■ マジでもう、「量」の時代じゃないんですね。乗って触って「うわ!」と思う質感、人はそいつでファンになる。取り込まれる。森永・山本様のコメントが、すごく納得できました、ありがとうございます。

 

■ ピンチをチャンスに!とは最近のMAZDAのためにある言葉だと思います。
規模が(あくまで比較的にですが)小さい、輸出比率が多い、ハイブリッドを持たないといった、ともすればネガティブな状況をMAZDAならではの強みに見事に変えてしまった。そのやり口は結果的にブランドの王道といえる、シンプル・ストレート・愚直・割り切り・開き直りです。当たり前のことを徹底的にやる。クルマで言えばベースとなるコンベンショナル・エンジン。ここで世界一のエンジンを目指す。それも、マスプロダクション前提の、他社とは違ったやり方で。リクツで言うのはたやすいですが、実際には途方もない困難が伴います。自動車は大きな設備投資を必要とする装置産業です。ビデオにもあった、クルマ一台全部ばらしてゼロから見直し、作り方の常識を覆し、商品のあり方も変える。それには全社一丸となった強い決意が必要となります。
ZOOM-ZOOM、に連なるBe a driverSKYACTIV、魂動<KODO>といった一連のブランドメッセージが役員をも泣かせるエッセンスビデオを紡ぎ、困難を克服しV字回復を成し遂げました。
藤原さんは「ブランドについて数々の悪さをしてきた・・」と仰っていましたが、そういった失敗体験があったからこそ今日の経営と一体となったブランドづくりがあり、外資の提携があったことで手法としてのブランディングを体得したのだと想像しました。
言及されませんでしたのでこれも想像ですが、「ロールフォワードとバックキャスト」とか「相反するものを直行軸におき、常識を疑ってブレークスルーを起こす」など、V字回復をもたらしたもう一方の功労として岸良さんのTOCが活きているのかなとも感じました。
それにしても「走る喜び」はどこも丸かぶりですね。ならばどういう「走り」の「質」と「味」を提供するのか、が益々問われることになりますし、ほんとうにそれしかないのか?パラダイムシフトを創れないか?お互いに切磋琢磨!考え続けなければなりません。

 

■ いやー、マツダというか藤原さんが素晴らしい! 流石に昨年のカー・オブ・ザ・イヤーを思いがけずCX5が受賞した時に、用意された原稿なしで藤原さんが行ったスピーチが感動的だったと、居合わせたジャーナリストが絶賛し、“スピーチ・オブ・ザ・イヤー”の称号を藤原さんに贈っただけのことはあります。
それにしてもマツダは、誰も成し得なかったロータリーエンジンをモノにして量産化するなど、昔からその技術力には定評がありましたが、販売チャンネル政策の失敗に象徴されるように、如何せん経営力が・・・。 そのロータリーエンジンが排ガスと燃費で悪者扱いされると、研究開発資金が限られる事と相まって、ブランドの旗印が見えなくなり、技術の優位性もすっかり失って、壊滅状態に。
実際、巷では「マツダ車は安いけど、他社ディーラーでの下取り価格がほぼゼロなので、無間地獄から抜けられず結局高い物につく」との評判で、フリートユーザー(教習所とか)に数台まとめてナンボの商売を余儀なくされていたようです。
そんな死の淵から“Zoom-Zoom”のブランドメッセージで社員が一丸となり、デザインと技術力(SKYACTIVE TECHNOLOGY)で黄泉がえり、今や世界中のカー・オブ・ザ・イヤーのファイナリストの常連になるまでに立ち直ったのですから、驚きです。
これも原爆投下で灰燼に帰した街から奇跡の復興を遂げた、広島ならではの人間力なのでしょうか。 後は学生さんの指摘にもあったように、販売力さえつければ藤原氏時代のような栄華を毛籠(モロ)享受できるかも。

 

■ ビジョンの重要性とそれを実現するためのプロセスの徹底に目が開かされました。特に、相反するものを二軸において、ブレークスルーを図るというところが印象的でした。
コントロール可能なところ以外は考えてもしょうがない、という点もその通りで、いかにこれらを徹底していくかがリーダーにかかっているのだと感じました。これからのマツダに注目です。

 

■ *参加に当たって
自動車業界の経営の一線で活躍されている方の
公演内容から製造業のブランドの考え方、進め方を知る

 聴講結果
*御自身の会社の進展、課題、今後の夢を極めて正直に述べられた
*御自身の会社を客観視するだけでなくマーケティングの観点から
2つのグラフ 商品力と共通性、顧客価値・機能価値 
考察は聞き応えが有った
*社内ビデオから「思い」の共有が大切と理解
*自社のあるべき顧客価値向上に向けた施策、商品創りに着実に進んでいる様が判り、理論と実践の見事な合致が見て取れた
*地元回帰が何故なされたかは深く聞けなかった。
苦しい時こそ足元を見つめなおす、原点回帰の発想と推測される。
*常務でありながら主要な4役も兼任されており 情報の集約がなされ
集中した検討と理論化、明確な判断、実践に
繋がったと拝察します。

 得たものと考察・展開
* コミュニケーションの軸は「思い」「夢」
   →業務に活用したい
* スリムな組織・人員構成の強み
→自社の中の弱みを探る鏡にしたい
* 元同僚・他社メンバーとの社外ネットワークの有用さ
→個人レベルで強めたい

 感想
*苦しい時期を乗り越えた方の実感あふれる講演で迫力がある
*1人でこなす機動力は流石
*現状から未来向けた心意気の明るさは見習いたい