参加者の声 堀場 厚氏

第5回 「京都の企業がなぜグローバルの展開に強いのか?」
堀場 厚 (㈱堀場製作所 代表取締役社長)

 

■堀場さま
貴重なお話しありがとうございました。
仕事に対する、会社に対する、社員に対する熱い想いを感じることができました。
また、自分にあてはめ、今後どのようにしたらいいのか大きなヒントをいただいた気がします。
これから、弊社で自分なりに実践していきたいと思います。
話はかわりますが、帰り際に二つお聞きしたいことが浮かびましたので記載させていただきます。
一つ目は、以前、あるインタビューで、『今まで一番影響を受けた方は誰ですか?』という質問に対して、『父親』と答えられていました。今回の講演会において、オーナーズマインドが必要であるとのことでしたが、やはり大きな影響を受けた創業者であるお父様のマインドと、三代目としてトップに立った時に大切にしたい、自分なりの想いというものがあったと思いますが、そのあたりの整合性というか、自分なりの調整というものは、どのように考えられたのでしょうか?
二つ目ですが、講演会の時の最後の資料で、6つの事業ということで、6種の色を使って60という数字を表していましたが、確か現在は5つの事業だとお聞きしたと思いますが、残った一つは60周年を機に新たなる事業を立ち上げるということなのでしょうか?それとも会社全体の意味なのでしょうか?
お忙しいところ申し訳ありませんがよろしくお願いします。

■この度は堀場社長の講演を拝聴させて頂き、ありがとうございました。
多くの心に残るキーワードがあったのですが、なぜ京都?というところが講演前から興味を持っていたこともあり、とても印象に残っております。もう1つがアンチ本社です。
京都は地形的な理由から、小さくて付加価値のあるものを作るのが得意という考え方。
これは世界の中の日本とも捉えられるのではと思います。
歴史や文化、建造物など、日本を象徴するものの多くをもつ京都の魅力を活かしたモノづくりは世界の中の日本特有のモノづくりの代表例の1つだと思います。
次にアンチ本社ですが、経営者としてなかなかできることではないことから、口ではそう言っていても、実態が伴っていない現場力主義者が多いような気がしています。
現場を回る数、ブラックジャックの取り組み、意見を常に発信する継続力が、各事業部門のトップが社長と同じ視点でHORIBAを語ることができ、社員に浸透する社風が醸成できたものなのか、と感じました。
我々はただの社会人ではなく、HORIBAの社員なんだ、というプライド。ホリバリアン。企業ブランド力を高めていく根底にある社員のプライドと飽くなき向上心。今回は非常に参考になるお話しを聞かせていただきました。

■ホリバは圧倒的世界ナンバーワンの企業ですが、京都という極めてローカルで狭い地域の企業だからこそ、世界に打って出る必要があった、というのは韓国のグローバル企業と似ているように感じました。 また丁度日本の自動車産業が貿易摩擦を回避すべく、グローバルに展開を始めた時期と重なった事も幸いしたと思いますが、本体の自動車メーカーよりも、役員を含め外国人が多く真のグローバル企業になっている点も韓国企業に似ており、見習うべきと思いました。
一方、M&Aについては、現場重視でボトムアップの日本企業と経営戦略重視でトップダウンの欧米企業では、企業文化・経営哲学が異なり、うまく行かないと思っていたのですが、ブラック・ジャック・プロジェクトなどを通じて、現場重視の文化を浸透させて(5年~8年かかったとは言え)成功させたところは長期的な視点での経営という面でも流石です。
特に、M&Aの動機が規模拡大やシェアアップというのではなく、自分たちのコア技術を高め幅を広げる目的であり、結果として時代変化・環境変化に対応してドミナントな地位をキープし続けられている事に感心させられました。
さらに人材育成の為の研修施設(FUN HOUSE)の考え方も、誰もが「それはいいね」と思っても出来ない事を、社長のリーダーシップで実現させた事も素晴らしいです。
でも個人的には「スポーティ」というのは日本だけの言葉で、海外ではそれを「セクシー」と言う、とのお話に最も膝を打ちました。

■たまたま堀場社長の講演当日、ダイヤモンドオンラインで「日本企業の社員のやる気は世界でダントツ最下位」という調査結果の記事を目にしました。調査内容は「従業員エンゲージメント(仕事に対するやる気度)」調査会社は米国の人事コンサルティング会社ケネクサ(KeneXa High Performance Institute)で調査対象は28カ国の社員100名以上の企業、団体など、サンプル数は約33,000人。その結果は一位インド77%、二位デンマーク67%、三位メキシコ63%、主要国では五位のアメリカ59%、以下、中国57%、ブラジル55%、ロシア48%、欧州先進国のイギリス、ドイツ、フランスは40%後半で弱い、しかし日本は31%でダントツ最下位、ちなみに韓国は40%でブービーとのことでした。
ここから見えてくるものは、日本の長引く不況、デフレ、揺らいでいる年金制度、リストラ、貧富格差の拡大など、失われた20年といわれる社会不安が、日本の働き盛りの人たちの夢を徐々に奪ってきた結果といえるのかもしれません。なんとも日本の将来が心配になってくるような調査結果でした。
しかし、堀場社長の講話を聴き、著作を読み進めるに従って、こんなに働きがいのある元気で素敵な会社も、まだまだ日本にはあるのだと認識を新たにし、頼もしく思いました。
堀場製作所のゆるぎない経営理念、経営層がたゆまなく発信する目指すべき道筋の明確さ、未来を見据えた確実な事業領域の拡大、挑戦を誘発する風土、公平感などが従事者の誇りとやる気を生みだす源泉となっているのでしょう。
政権が代わって打ち出された施策に学者やアナリストなど、様々な考え方が飛び交っています。しかし、不況だからといって手を拱いていれば成せるものも成りません。
日本を元気にするには、人々が小さくても夢を持てること、その夢を実現するためには様々な働く場や家庭が元気になること。政府から打ち出される政策も大きな要素ですが、我々にもやるべきことがあるはずです。何事も政策頼みではあまりにも情けない。
それなりに経営できている企業は、今こそ内部留保を吐き出して、地に着いた発展のための事業戦略を構築し、従事者に夢をもたせ、彼らの力を結集して実現する。
また、経営難に喘いでいる企業も、苦しいでしょうが目先の合理化ばかり考えるのではなくて、共有化する夢の実現のためもう一度原点(企業理念)に立ち戻り、有能な従事者を中心に力を結集し、やる気を引き出す。そして、足腰の強い会社に鍛え直すことが必要なのでしょう。
と、勝手を言うのは簡単です。しかし、人々が何らかの「やる気」をもたねばこの日本はいずれ立ちいかぬようになるでしょう。人は宝です。

■『非常に勉強になった』というよりは『ただただ圧倒された』が感想として正確な表現です。
堀場社長を象徴する最もインパクトのあった言葉は、『IR発表や株主総会で全然緊張しない』です。アナリスト向けのIR発表や株主総会に少しでも関与したことのある人なら誰もが認めるビックリ発言でしょう。
質疑応答であった『堀場社長後の堀場製作所』について、HORIBAスピリットは変わらないから大丈夫と返答されていました。私も企業風土が簡単に変わるようなものでないと感じましたが、一方で社長が思っている以上に遥かに社長の存在は大きいように感じます。中間管理職の方にそのあたりのホンネを伺ってみたいですね。

■年始早々、有難い演目に感謝します。頂いた本に即目を通してみると、ある一節に、演目の肝を感じました。第四章186頁に、京都の老舗企業は、「変えるべきもの」と「変えてはいけないもの」を分けてから、「変えるべきもの」を変え、「変えてはいけないもの」を残し、絶えず新しい血を入れ事業を継承しているのです。と記述されています。自分自身も、変えること一辺倒の考え方だと、気付かせて頂きました。また、企業は舞台、経営者は演出家、社員は役者とも書かれ、「社員を生身の人間として、まず認めること」、一流の役者を認めるから、演出家は起用する訳で、その稽古場(研修所)も一級の設備なのは、自明なことですし、役者のお稽古(現場)を、常に演出家が気にするのも当然です。そして、堀場社長自身が、これらの環境を規律で縛り「楽を求める」のではなく、規律で縛らず、「自らに課し」、さまざまな現場を、「直視する姿勢」に深く感銘しました。ブラックジャック、カレンダー製作、ブランドブック、生身の人肌を、強く感じます。書籍は、これから熟読し、自分の社会生活に活かしていきたいと思います。いつもながら、感謝、感謝、ありがとうございます。

■京都の老舗企業のトップらしい大変ユーモアがあってわかり易く、かつ1本筋の通ったお話にとても感化されました。現在読んでいるJim Stengelさんの本(「GROW」)と重なって見える話が多く、特にブランドの理念を中心に組織が動くようトップが強い意志をもってマネジメントされていらっしゃる事に感銘を覚えました。
小職も海外赴任時代に本社を敵と思っておりました。新年の日経新聞に海外駐在員の符丁として「OKY(おまえ、ここに来て、やってみろの略)」が紹介されておりましたが、まさに今回の堀場社長の海外経験の話と相まって我が意を得たりといった感覚です。研修センターでのウエィの継承、ブラックジャックコンテストによるボトムアップ等、表面上はいろんな会社で行われている事かと存じますが、「おもしろおかしく」が社是の会社でアンチ本社のマインドを持たれた社長がこまやかな工夫を不断に行われているからこそ、うまく回っているのだろうなと素直に感じいった次第です。

■何とも生き生きとした会社である。
社員の一人ひとりの心の中に、会社の中核を成す「5つのおもい」が脈々と生きている。
5千人を超える規模で、世界中に散らばる拠点、人種、文化を超えて、M&Aや生え抜きに関係なく、同じ「おもい」が遍く浸透しているということはすでに奇跡的な偉業だ。
しかもそれが、金太郎飴みたいな同質化した社員やアイデアに陥ることなく、逆に最高レベルのダイバーシティとインテグリティを可能にしているところがHORIBAの比類なき強みである。
『ビジョナリー カンパニー』著者のジム・コリンズ氏曰く、「まず人選ありき(ファースト・フー)」。適材をバスに乗せ、適所に座らせ、「不適材」をバスから降ろす。そうすればおのずとバスの行き先は決まります。 危機に際して「戦略を変えよう」「製品を変えよう」「ブランドを変えよう」「技術を変えよう」などと思ってはいけません。最初にバスを見るべきです。」とのことだが、この「人ありき」は言うは易し、行うに難し。
より多く買ってもらうために、コンシューマーの意識や行動を自社に好意的に変えることには優れた企業も、コンシューマーと同じぐらい自らの社員の意識や行動をケアしているという例は稀である。市場調査や消費者調査以上に、社員の士気は経営者にとって最重要の指標として捉えられるべきであろう。

■いかに人々に必要とされる仕事が出来るか?がプライドになるという事はこれまでの自分を振り返るいい機会になった。
買収した企業が自らHORIBAを名乗るというお話がありましたが、実績や信頼だけでなく、ある種の憧れがあって始めてその様な事が起こるのだと感じました。どの角度から見ても素晴らしい企業でないと、この様な事はないと感じました。この様な内容があるからこそ、社員がプライドを持って働く事が出来るのだと思います。
自社がまわりから憧れられる存在になる為に、何をすべきか?その為に今自分は何をすべきか?
非常に考えさせられました。

■世界から高く評価されている企業の根底にある考え方に触れる事が出来、大変参考になりました。
地理的な制限がある事が理由で、高付加価値製品を作る傾向があるとのことでしたが、結果的にそれらの製品がマーケットを主導し、グローバルスタンダードになっているという事実については特に強い感銘を受けました。
これはグローバルで見た時に、資源も土地もない日本という国がどういう戦い方をしていくべきかという観点で、大変参考になりました。
また、堀場社長が自社の社員を強く信頼し、なおかつご自身の仕事を本当に楽しんで遂行していらっしゃる事が強く伝わってきました。そういった姿こそが多くの社員をまとめ上げるために必要な事なのだろうと感じたため、私自身も立場は違えど、多くの人を巻き込んで仕事をする際は、常に見本にさせていただこうと決めました。
今回は貴重な機会をご提供いただき、誠にありがとうございました。

■「企業の国際化」と言っても販路を海外に展開する、いわば外部的国際化を指向するケースが多いように感じている。堀場製作所のケースは、製品そのものの国際性に加え、内部からの国際化を図った企業と感じた。
堀場社長のお話での取り組みは、小集団活動をはじめとして伝統的な日本型経営の手法を、無理なく外国人社員に適用できている点で感銘を受けました。大きく考え方の違う各国のスタッフに対し、同じ手法でのモチベーションの形成はおそらく均質な取り組みで可能になるものではなく、共通の取り組みをそれぞれローカライズして適用するという、現代の成功多国籍企業のもっとも重要な要素に通じるのではないでしょうか。

■自信に満ちたご発言には、昨今見通しが効かないこともあって言語明瞭意味不明の話が多い中で大いに意を強くした。
特に、現場重視をトップが明瞭にされることは、(本社のテクノクラートが自分も現場と誤解していることがあるので要注意だが)是非徹底していただきたい。
海外への積極的な展開も、単なる拡大ではなく充分なガバナンスに基づいていると拝察され好感が持てた。
こういう企業が育つのは、京セラやオムロンと並べて話が良く出るが、そうした地場特性が本当にあるのか、普遍性があるのかについて知りたいところである。
加えて、今や大企業でありながら経営を継承することについてご自分のことではなく、今後の問題としてどのような結論になるのか(実際は知られていることかもしれないが)気になるところでもあった。
私も数年前まで、創業家と大番頭がミックスして社長を務めるメーカーにおり、正直を言うと割り切れない思いがあったからである。創業家の求心力はうまく使えるうちはよいが、問題が出てきたときに逆に振れることが世間の事例では見られるようである。勿論、継ぐべき当人の人格や経験、覚悟は言うまでもない。大きなものを背負い、公平に他者と向き合えるかがカギとなる。
この問題と表裏にあるのが、技術の優位性である。自信は必要だが、結果論として過信になってしまわないことが極めて難しいと思う。電機・電子業界を見ているとつくづくそう思うし、日本はすべての産業で追いかけ、追いつき、追い越して、今や追われ、追い越されようという厳しい競争に多方面でさらされている。
企業のレゾンデートルが日本という国にあるわけではない、という上記とはやや様相を異にする会社の在り様が救うことになるのか、私としては、世界に通用する「日本の」優良企業であって欲しい。
技術の勝負は、高められて限界効用が低くなるところで見極めをつけてマーケティングに任せろ風の意見も聞かれるが、私はそこががんばりどころで、「ガラパゴス論」には反対である。追いかける方が易しいので追われる方は追いつかれる可能性が高いが、そこからががんばりどころになる。社長の舵取りに期待したい。
いずれにしても、意気軒高なお話が聞けて愉快でした。
最後に注文をすれば、採用について1-2割は変な奴を入れろというのは大賛成で、ただしその先に注文を付けるのはいかがかと思う。変な奴なら変な奴で入れれば良いので、予防線を張るなら5%くらいに抑えるだけにした方が良い。入社してからOJT・OFFJTを含めどれくらい教育できるかも、企業の長期的な強さのバロメーターかと思う。

■貴重なお話をありがとうございました。箇条書きで失礼いたします。
・常識やマスコミの報道、財務諸表など常に疑ってみる→きちんと情報を受け取る
・多面的に・俯瞰で物事を捉える
・企業は家と言い、かたやグローバルにも展開、と一見矛盾していることがきちんと両立している

■講演をお聞きして
前提
*HORIBA様とは 日本国内・海外にて仕事をさせて頂き
BtoBの領域での技術力、サービス力の高さは実感しております。 その前提にて
今回聞きたかった事
1 京都所在の企業の特質、強味
2 世界展開の考え方

今回知り得た事
1について
「小さなもの、付加価値の高いものに向く」は同地域に在の他社
の強味を含め 納得出来るものでした。
明治以降の日本の産業の有り方として、「加工貿易」を基盤と
して来たと考えるならば、最も適した強味を持つ土地柄と
考えます。モノ作りの関して、表に現れない構成部品、計測器
など、まだまだ他国に対し、付加価値を付ける分野が健在で
失望すべきで無いと意を新たにしました。
2について
反面 自らの弱み、大きな計測が不得意などの分野でM&Aにて
着実に業態を強化していく、攻めも見事と感じました。
夢を追い、着実な経営の実線のバランスが見事と感じました。

■「面白い会社。面白い社長さんだなぁ~」と率直な印象をもちました。
年甲斐もなく?「こんな会社で働きたい」とも思いました。
エンタメ系の会社でもなく、流行のIT系ベンチャーでもなく、どちらかといえば堅い、BtoBの、産業機器メーカーが、何故?
お話をうかがい、社是が「おもしろおかしく」とのこと。納得しました。
大概、社長さんの話というと、広報が用意した資料に沿って、当社は売り上げが幾らでシェアが何%でといった数字の話、あるいは自社製品がいかに優れているかといった技術の話が多いのですが今回の堀場さんのお話は終始一貫、人にフォーカスした内容だったと思いました。
サービスは人が人に働きかけるアクションですし、製品もロボットが作るものではなく元々は人が人に対して何かをして差し上げたいという想いとアクションを届けるための容器だと思います。
想いをもった「中の人」がいてはじめてよい製品が出来、企業が認められ、、存在を期待されるようになるのです。
人材を人財として貴び、「FUN HOUSE」「ブラックジャックプロジェクト」「ブランドブック」などの「器」をしつらえ、一流の人づくりを進めている堀場さんもまた稀有の「人」であり京職人なのだとお見受けしました。
ともすれば強者が弱者を呑み込むイメージのM&Aについても、喜ばれるM&Aもあるのかと考えを改めました。プロポーズのたとえはとても「おもしろおかしく」解りやすかったです。M&Aにおけるブランド統合はコンサルビジネスのネタのひとつですが、HORIBAにおいては全く不要だったのではと推察します。
そして、「プレミアムであれ」ということ。一流になるには一流を知ること。
ベストを尽くすことで、それが自信になり、自らもプレミアムになっていく。
リサイクル資源の増量に寄与するカレンダーが多いなか、HORIBAのカレンダーはBtoB産業機器メーカーとしては過剰かもしれません。
否、これは決して内輪の自己満足や独りよがりではなく、顧客に響き、未来のHORIBAファンを育てるブランドづくりのひとつとなっていると思います。
良いカレンダーは自宅にも持ち帰られ家族の話題にもなります。そこのお宅のお子さんが大きくなり数年で大人になります。科学に興味がある、HORIBAを知っている大人になるのです。
これからも、世界中にHORIBAのファンが増えていくことを期待しております。

■ 講演が始まるとすぐに会場に漂うある匂いに気付いた。それは独特の京都の香りで、その源はもちろん京都弁で語る、京都ブランドを纏ったユニークな経営者、堀場社長だ。

講演終了後、堀場社長を表現する3つのキーワードが浮かんだ。「ほんまもん」、「いけず」、「ちんとんしゃん」だ。

まず、ものづくりへの徹底したこだわり。お客さまが必要とするモノ、社会に役立つモノ、そして自分たちが誇りをもって作りたいモノ。これら三位一体となった商品開発を行い、世界シェア8割を超える「ほんまもん」のものづくりを実現している。

次に自分たちでデファクトスタンダードを構築してしまうしたたかさ。それは一面「いけず」だ。京都には部外者には理解できないプロトコルがあり、千年栄えてきた京都人の矜持なのだ。

最後に「ちんとんしゃん」。これはもう、堀場社長から滲み出る京都の「旦那」の匂いだ。言い換えれば、「ザ・経営者」。「ザ・経営者」とは、寝ても覚めても24時間仕事の人と云う意味で、仕事とは生きることと同義なのである。

『京都の企業はなぜ独創的なのか」を改めて考えたとき、京都には鴨長明の「栄枯盛衰」の世界観が脈々と受け継がれているのではないかと感じた。たとえば、京都の代表的なものとして西陣の着物がある。しかし、日本のくらしの中から着物はすでに姿を消している。西陣を取り巻くきもやその周辺の「和物」産業の激変(衰退)を目の当たりにしている京都人は、伝統と革新と云うDNAがある種刷り込まれており、伝統を受け継ぐことと同時に、変化しなければ生き残っていけないと云う風土の中で、独創性が自ずと育まれていると思った。

■ 商品だけで勝負できる時代は終わった(潮目が変わった)。ビジネスモデルで勝負する時代。これを平然と言われる、そしてその裏付けとなるプロフェッショナルな人材の集まり、京都企業の強さを垣間見た時間でした。

■ 社員全員のベクトルを集中することで大きな力が生まれる内容には、大変共感いたします。会社の規模(人数)が今よりももっと大きくなった時、同様の進め方を実行する為には、追加の何かが必要であると考えるのですが、今の自分では、それが何か思いつかず、なにかヒントになるようなものがあれば、お聞かせ願いたい。