参加者の声 中野克彦「真っ当な食材で豊かな暮らし」

丸の内ブランドフォーラム ラウンド 16・2
第2回 9月 27日(火)
中野克彦 築地仲卸 伏高 三代目店主
「真っ当な食材で豊かな暮らし」

■ 今食べているものの多くが、50年前に食べられていたのとは全然異なるまがい物であるとは、衝撃を受けた。なんとかならんかと思う反面、これはこれでしょうがないのかとも思う。海苔と酢はまだなんとかなるかな。自然相手だしある程度は工業化できる。でも家内制手工業の鰹節は、国が予算でも付けないかぎり、もう無理かもしれない。
考えてみりゃ、農産物だってそうだ。葉のとがったほうれん草やごつごつしたカボチャ、ちゃんと赤い(オレンジ色じゃない)ニンジンなど日本古来の種は、見たこともなければ食べたこともない。加工度の低い一次産品でさえこうなのだから、人手を要する本枯れ鰹節の命運は、かなり暗いな。
家庭料理にも絶滅危惧種を思い出した。棒鱈の煮物。お袋の作るおせち料理でしか食べたことがない。いわく、総工程5日間と非常に手間のかかるものらしい。私らが味を知る最後の世代になるんだろう。
まあ、しょうがないわな。フランス人だって本物のフォアグラはワシントン条約的に食べられなくなっちゃってるわけだし。食べられる(食べれる、じゃないよ!)時代に生まれたことに感謝して、今のうちに食べておこう。

 

■ 貴重なお話をありがとうございました。
現代の便利な機械的な製造方法の発展が、本物の味、古来の製法を淘汰していってしまっていることをはじめて知りました。
海外への販路も難しい、ギフト需要がほとんどない、製造家が家族に跡を継がせたくない等様々な問題が多く、こういった事実すら知らなかったというのを恥ずかしく思います。
100円寿司の酢、コンビニおにぎりのノリ、旨味調味料やカツオ節のお手軽パック。これらの味に慣れた現代の若者の趣味の一つに、鰹節削りが流行ると良いのではないかと思いました。

 

■ 昔はウチにもありました。鰹節削り器。カンナなのに調理道具なのが不思議でした。それがいつしか姿を消したのはパック入りの削り節に取って代わったからです。大多数の家庭では味よりも利便性を選択したのです。これは優劣ということではなく、モノサシが変わったのではないかと。決して日本人の味覚がバカになったのではなく(このままではバカになりますが)美味しいというより便利が高度成長期には優先課題だったのでしょう。ただ、便利が一巡した世界では美味しいというモノサシが見直されています。昔はグルメなんて無かったですから。
しかしながら、真っ当な仕上げ節製造者が絶滅の危機、とは聞き捨てならないお話。なんとかしなければ。

『日本の食文化を「日本の食文化を守りましょう」なんて偉そうなことは考えていません。ただただ、旨い物を食べた方が人間は幸せだと思っているだけです。』と謙遜されるが、その行動は大志によるものであり、天命と思えばこその意志で貫かれていると確信しました。

>伏高は「真っ当な食材」をつくる製造家を応援しています。
>そして「真っ当な食材」を求めて下さるお客様を大切にします。

製造家とお客様を仲立ちする者として双方と向き合い、育み、つなげることで、子や子孫の世代まで本当においしいものを伝え残していく。かっこいい!大志です。

■ 本節という素晴らしい保存食品が危機に瀕していることはよくわかった。ただ、食文化も時代と共に変わっていくことは止められない。本節を自分で削って出汁をとるという行動をどうしたら現代の消費者にとってもらえるようになるかをグループ討論で話し合ったが、画期的なアイデアはでなかった。コーヒー豆を挽くことと同じように、趣味としての本節を削るという行為は残せるかもしれないが、利便性や時短が求められる日常の中で、存在感を取り戻すのは難しいだろう。
むしろ、たとえ顆粒の出汁だとしても、出汁を使う、出汁の味を大事にするという文化をどう残していくか。ヨーロッパでは魚醤のガルニは失われても、アンチョビの形で残っているように、それもチューブなど使いやすい形が導入されているように、鰹節もさらにおいしく、使いやすく進化させていくことはできないのか。天然の魚自体もいつまで獲ったり食べたりし続けられるかわからない。持続的な食文化とは、古いものをそのまま残すこととは限らないと思う。・・・ということを、考えさせられました。

 

■ 日本の食の現状を改めて知り、また、その重要性を認識でき、興味深く聞かせて頂きました。現状に対する取り組みとともに、食の移り変わりに対して、抗うのではなく柔軟に対応する意識と、講演後の学生方々との意見交換で食の違いを認識できたのは、有意義で勉強になりました。
有り難うございました。

 

■ 鰹節は子供の頃、オヤジが建築関係だったこともあり、大工用のカンナを使って削るところを見たり、やらされたりした覚えがありますが、上手く削れないながらも、やりながら美味しく齧った、懐かしい思い出があります。 確かにお中元やお歳暮で本節が届いていましたが、いつの間にかなくなりましたね。やはり家庭でダシをとるのは、後処理の手間を考えるとどうしても“だしの素”に走るし、また料理にかけて食べるのも手間いらずの“花かつおパック”になってしまいますね。 でもそれが本節の絶滅につながるなんて、思いもよりませんでした。 また海苔に関しては、もっとビックリ! まさか黒光りする浅草海苔が高級品だと思っていたのが、実はスサビ海苔で酸処理をしていたものだったとは・・・。 ショックというか、心が荒びますね。 そう言えば先日TV(ガイアの夜明け)でフランスに鰹節生産工場を建設する話をやっていましたが、EUの規制をクリアすべく燻しを減らした製法で、果たしてどの程度のものができるのか、気になるところですが、和食の肝となるダシの素である本物の鰹節が世界に拡がれば、絶滅の危機から救えるのではないかと期待しています。

 

《片平ゼミ学生》

■ 情報化が進んだいま、昔ながらのやり方できちんと作られている鰹節や海苔が、何かのきっかけですごく人気がでる可能性も十分あるのではないかと感じた。

 

■ 業界の現状などについても包み隠さずお話いただき、本当に勉強になった。良いものが、若い世代に知られないまま淘汰されてしまうのは非常に残念なことだと思う。まず顧客に「良さを知ってもらう」ことの難しさを感じた。また、顧客のみならず、産業として存続していくために、潜在的な後継者に対するブランディング、PRも重要なのだと知った。

 

■ 絶滅危惧種についての話は興味深かった。自分が好きなものがなくなっていくのは悲しいし、一方で普及品も今まで成長してきた社会を下支えしてきているわけだから一概に何が悪いとも言えない。しかし伝統や文化を駆逐するまでになるのは個人的に悲しいので、好きな人が好きだから愛するというふうにしてずっと存続するのが素晴らしいと思う。理想論だけど。そしてそのようなすばらしいものを作る職人さんが、リーズナブルな豊かな生活を送れないのも悲しい。その辺りにもアプローチできればいいなと思った。

 

■ 実際に削ることで、鰹節の良さに気づくことができたので、実演があって本当によかったです。

■ 食品の絶滅のお話が興味深かったです。また、革新的な技術改良と古来の製法は絶対的にどちらが良い悪いというものではなく、共存が難しいと思いました。

 

■ 良いものが売れない、素晴らしいものが売れない、そんな遣る瀬無い、悲しい現状が続いていると痛感しました。少しでも貢献できるよう、日常にほんの少しでも真っ当な本物を取り入れられるよう、そしてそれを次代に繋げるよう努力しようと感じました。

 

■ 今回のお話は、自分にとって驚きの多いものでした。曲がりなりにも日本人として、日本食の味は分かると思っていたので、自分のこれまで食べてきた海苔、酢などがある種まがい物であったと言われてがっくりしてしまいました。しかしその一方で、本物の味を試してみたいなという気持ちも強まりました。「まっとうな食材」を知ることでさらに食への興味は高まると思うので、是非タイミングを見つけて試してみたいと思います。
また中野さんの築地へのスタンスも素敵でした。お話の中から、築地への愛着と、外から見た冷静さの両方が垣間見えて、築地のブランド、またそれを揺るがそうとしている昨今の事象に対する中野さんなりの意見をさらにお聞きしたいと思いました。
自分の中にあった「日本食」像が揺るがされ、逆に関心が高まったように感じます。貴重なお話ありがとうございました。

■ 日本では高度成長期から大量・安定・廉価で生産できる食が普及したとおっしゃっていましたが、それ以降の時代しか知らない若者世代にとってそれが「当たり前」の食文化になっているなと感じました。自分にとってはそのような食文化でも愛着や誇りはあるのですが、中野さんのおっしゃる「真っ当な」食を味わう機会が殆ど無いことは非常に残念に思います。しかしながらそんな舌の肥えていない私でも築地で開催された「大人の教養学部:日本の食文化」で試食させていただいた鰹出汁の違いははっきりと理解できたため、年に数回でも特別な時に「真っ当な」食を味わう機会を設けていきたいと思いました。

■ 貴重なお話をありがとうございました。パンフレットを頂けた上に鰹節削り体験もさせて頂けて、視覚的にも楽しい講演で大変興味深くお話を拝聴しました。お話の中では、鰹節と味の素を比べるのはカニとカニかまを比べるのと同じ、という喩えがとてもわかりやすく、特に疑問も抱かずに味の素を使用していたことに反省しました。私は母の影響もあり、できるだけ自然食品や無添加食品などを摂取するようにしているのですが、調味料に関してはほとんど添加物の存在を意識していなかったことに今回の講演で気付かされました。母に、鰹節の取り寄せを提案してみようと思います。
改めまして、この度はお忙しい中お時間を割いて頂き、本当にありがとうございました。

 

■ とても面白くテンポよく話されていて、楽しい時間でした。最後の「食材を安くすることは高度経済成長期には必要なことだったかもしれない」というお話は非常に腑に落ちるものがありました。流行しているお店を見ても、安いものよりも質を求めるようになっていると思う(百円ショップ、ユニクロとか?)ので、食についても質を大切にする人が出てくるのではないかなと思います。個人的に鰹節ギフトは、わざわざ自分のためには買わないな、という人に届けば美味しさを知るきっかけになっていいなと思いました。