ブランドジャパン2005を語る

片平秀貴

ブランドジャパンも今年で5年目を迎える。今のかたちになって4年になるが、4年分の時系列データが蓄積されたのはうれしい限りだ。これによって、わが国のブランドについて、時間にかかわらず安定した傾向と短期的な変動がより明確に区別できるようになった。

まず、本調査の特徴をもう一度確認しておこう。一つは、消費者と企業人の頭の中にあるブランドの姿をなるべくそのままのかたちで測ろう、という点である。調査対象ブランド名はこちらで用意するのではなく、純粋想起の予備調査で挙がったものを用いているのもその一つの表れである。もう一つは、一般消費者がユーザーの立場から評価する調査(これを「BtoC版」と呼ぶ)と企業人が職業的立場から他社ブランドを評価する調査(これを「BtoB版」と呼ぶ)の2本立てになっていて、ブランド力を多角的にとらえることが可能になっている点である。それらをふまえて今年の結果を見てみることにする。

まず、長期的な傾向として、一般消費者の間ではソニー、スタジオジブリ、ディズニーが安定的に強く、東急ハンズ、ザ・ダイソー、無印良品といった流通系のブランドも常に10位から20位あたりにいるのも非常に興味深い。一般消費者の頭の中は、いわゆる識者たちの常識とは異なっていることになる。一方、企業人による評価では、今回の上位5ブランド、トヨタ、ホンダ、ソニー、キャノン、松下、はほぼ安定して強く、より「常識」に近いことが分かる。

今年、躍進したブランドとしては、BtoCではヤマト運輸、ユニクロ、シャープ、松下電器、BtoBではアップルコンピューターなどが挙げられる。いずれも、顧客を向いた着実な努力に加えて、旬な話題を振りまいているブランドだ。また、BtoBの活力軸でライブドアが1位、楽天が4位に入り、親和力軸と先見力軸でジャパネットたかたが10位以内に入ったのは、ニュースの効果が思いのほか強いことをうかがわせる。

ブランドは一夜にして壊れる、と言われているが、実は顧客の頭はもっと粘っこい。世間の逆風にもかかわらずBtoCでソニーが1位に返り咲き、昨年、「田中さん効果」で急上昇した島津製作所がBtoBでその効果を持続させているのはその一例だ。特にソニーは、プレスでは昨今散々の評価だが、「私はソニーファン」という消費者が減っていない点を再認識すべきだ。「最近使った」というスコアが大きく減っていることを考え合わせると、「ソニーさん、早く私たちの欲しいものを出して」という隠れた声が聞こえてくる。2年前に50位以内だった、VAIOやプレステ2、SME、SCE,ソニープラザなどのサブブランドがすべて50位圏外に去ったことはそこのところを如実に表している。

日本人の頭の中にあるブランド像を測ったデータベースでこれほどリッチなものは他にない。今、自分のブランドはどのような評価を受けているのか、当初目指したものとの乖離はないか、何か危険な兆候は出ていないか、等々ブランドジャパンから得られる洞察は計り知れない。ブランドづくりの現場での脇役として、ブランド人の皆さんに有効活用していただくことを願ってやまない。


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