第2回 《特別講演》 前田昭博 重要無形文化財「白磁」保持者
「私の仕事、私の故郷」
(註:*印は学生)
*■とても感動した。高潔な魂に触れた気がした。
■点と点が繋がる人生のくだりは、ハッとしたし、感動した。いろいろなことがあっても継続して試行錯誤(挑戦)することが無駄ではないことを素直に信じて、自分の人生にも活かしたい。いつか今の個々の挑戦が繋がる日が来ることを期待して、信念を持って歩もうと思う。
本日は、ありがとうございました。
■美大出の端くれとしてはまずは白の美しさ不思議さ奥深さ難しさを賞賛したい。白を描かずに白を描くのは難しいのである。簡素にしないとできない魅力。何もないようで何もがある。先生の作品は鳥取の原風景を凝集させて観るものの前に強烈にしかし優しくやわらかに解き放っている。作品と対峙するときそのオーラに圧倒されるのだ。土を捏ねるとき、轆轤を回すとき、スクレイパーで削るとき、ペーパーで磨くとき、釉薬を吹き付けるとき、あやす様になだめるようになでるように対話をしているのだと思う。至福の時間だと思う。創造<Creative>と想像<Imagination>。想いを込めた作品を通して創作者と使用者が対話し、思いが伝わる時、双方にとって幸せな世界である。無垢の白瓷にブランド・リレーションシップの神髄を見た。
*■重要文化財保持者で人間国宝の前田先生のお話を伺えるということで楽しみにしていましたが、やはり前田さんの言葉は重みがあって身に染みました。もともと物作りのプロというと技術が卓越しているイメージが先行していましたが、工芸作品は美(想い)と技が織りなすものであってどちらかが欠けていては決して良い作品ができないのだなと思いました。また、自分の今後の人生にも落とし込めるようなありがたい教訓も学べ、非常に良い経験をさせてもらえました。
*■ハッとする、胸が震えるお言葉の連続でした。とても聞きやすいお話だったが故に、僕としては分かった気になってしまう怖さも感じました。今日のお話の1つ1つの背景に自分には想像できないような人生のあゆみがあるのだということを忘れてはいけないと思いました。今日伺った話をすぐに自分の生活に活かそうなどとおこがましいことは言えませんが、これから生きていく中で1つでも腑に落ちることがあればいいなと思います。
全てのお話が面白かったのですが、特に「風土と生活環境」のお話と、「存在感(力)と品格」の話
です。
・無意識のうちに、生まれ育ち、また制作をされている土地の自然の影響を受けている(と自覚されている)というのは、理屈では説明できないような、人間個人内の宇宙と、人間を含む自然環境という宇宙が作用しているように思えました。説明できないけれど因果を感じる、この不思議にとても惹かれました。
・後者に関しては、演劇を創る際、また評価する際によく使われる「作品の強度」という言葉に通ずるものがあると思い、曖昧に使われている言葉なので、その意味を考える上で参考になるように思えました。
貴重な講演をありがとうございました!
*■自分がいままで関わることのなかった陶芸という分野の頂点を極められた方とお会いできる貴重な機会だった。質問までさせていただき感謝致します。前田さんの熱い思いがとても伝わってきて胸が一杯になりました。やはり自分は、伝統とは継承ではなく新しく創造すること、そしてそれを新しい伝統とすることだ、ということがとても衝撃的でした。伝統と創造とは真逆の概念だと思っていたので僕に新しい視点を与えていただけたと思っています。その中で、創造するにしても伝統を残すには、伝統を
重んじその中の良いところは残すべきだろうというのが僕の考えなのですが、前田さんは壊そうとしないと潰れないし逆に潰されるよと仰っていてとても気概のある方だなあと感じました。
また、苦労してきた中で自分の強みを把握し、好きなことを仕事として、こだわりを持ち、極めるという前田さんの人生を聞き、自分自身のこれからの人生についても考えることができました。
本当にありがとうございました。
*■人間国宝の前田さんのお話に大きな感銘を受けました。前田さんのお話から、陶芸を好きであるという自分の気持ちに「素直」になり、できるところまでやりぬく「継続力」をしみじみと感じた。また、二つ印象深い言葉があり、一つは「伝統は継承していくものではなく、創作していくものである」というお言葉、もう一つは「作品を見た人がサインを見なくても自身が作ったものであると思ってもらいたい、気に入っていただけるような魅力を追求していきたい」というお言葉です。実際に展覧会に足を運び、この目で作品を拝見したいと強く感じました。
■貴重なるご講演、ほんとうにありがとうございました。お話しの初めから最後の章にいたるまで音楽でたとえるとボレロのような印象、ストーリーテリングに満ちた人生観に広がるご講演でした。「前田さんが考える白磁とは」をお聞きできたことが一番の収穫。片平さんがおっしゃる通り、自分のやるべき仕事に置き換えて想像しておりました。コンセプトの大切さを改めて感じ、確認することができました。
*■前田さんの半生ならびに作品作りへのこだわりなど大変興味深く、大いに感銘を受けました。中でも作品作りの上で大切にしている6つの要素、「かたちの美しさ」「省略・簡素」「間合い・余白」
「光と影が織りなす陰影」「創造と想像」「存在感と品格」につきましては、私自身デザインという分野で制作活動を行っているため、今後の私自身の創作において貴重なエッセンスとして消化させていただきたいと思いました。自然物、特に雪の白さからインスピレーションを得て作品作りに励まれているとのことでしたが、私も雪国出身であるためか雪の白さやただ白いのではなく陰影をもって降り積もる雪のあり様が刺激をくれるという点に非常に共感しました。降り積もる雪が見せてくれる存在感・陰影には際限がないと思います。同様に鳥取の雪、その白さを前にして作られる前田さんの白磁もまだまだ可能性を秘めているのではないかと思いました。次回の個展も楽しみにしたいと思います。ご講演ありがとうございました。
*■前田さんのような人でも「悩む」ものだとまず驚いた。が、大家となっても「悩む」姿勢こそが成長し続ける証であり、長年白磁を作り続けた前田さんの原動力だと感じた。作ったものを壊すことにも意味があるという話も含め、「悩む」ことを肯定的に捉えられたように思う。
また、「伝統の核とは?」の話の中で伝統を壊す姿勢が非常に参考になった。「核とは壊そうとしても壊れないもので、生半可に壊そうとすればこちらが壊れる」、とのお話は今後社会に出た際に覚えておきたい言葉だった。気軽に「改革」とは言えないように思った。変えていくこと、変わらず大切にするものへの自身の姿勢を改めようと思った。
『私の仕事、私の故郷』というテーマはconnecting dotsを彷彿させるが、それに加えて「素直さ」
「根気強さ」というシンプルなことを若き前田さんが大切にしていたこと、これは点をつなぐためにも点を作るためにも必須だと感じた。
「悩む」「素直さ」「根気強さ」というこの3フレーズ、「核は容易に壊れないもの。壊すなら本気
で」という姿勢が一番の学びだった。
■ビジネス分野で活躍されている方のお話とは全く違う、人生にかかわる示唆がたくさんありました。
そしてお話を聞きながら、前田さんが仕事に向かうときの心や気構え、身体の動きなどをまざまざと感じ取ることができ、五感が研ぎ澄まされていくような気がしました。その事自体が素晴らしい体験でした。一方で、「伝統とは革新である、常に自分を超えていく」という言葉や、前田さん「自らの白瓷の定義」からは、ビジネスにも通じる気づきがありました。この欄で書ききることなど到底できないような学びの場でした。GW前の時間をMBFに振り向けることができた人はとてもラッキーだったと思います。
*■講演の中で、前田さんの「白磁が好き!」という思いが前面に伝わってきました。工芸は美とわざから成っており、美は「想い」である、ということが特に印象に残りました。この「想い」が「私の考える白磁」につながり、前田さんの芯となって多くの受け手を惹きつけているのだと思いました。また、白磁を創作するにあたって人に教えを請うのではなく、試行錯誤を重ねることで自分の白磁を作り上げてきたという部分に関して、近道をするのではなく、遠回りをすることによってのみ生まれる奥深さのようなものがあるのだと感じました。
*■アート作品を作る意識でやられていると勝手に想像していたため、使ってもらうことを第一に考えていらっしゃったのが印象的でした。しかし、日本ではアートと道具が一体であるというお言葉にも納得させられました。また、思い描く作品にするためにイメージをまずしっかり組み立てるとおっしゃっていた時、個人の持つセンスや技能はアウトプットして客観視してこそ自覚的になって活かせるのではないかと感じました。一方で、終始前田さんの持つ言葉にできないが一貫した強い芯で空間が形成されらご講演で、独特な体験記憶になり興味深かったです。今後もゲスト講演をやっていただきたいです。
■「伝統とは創作の連続」
「伝統の中には叩き壊そうと思っても壊せない部分がある、そこを把握した上で変えていける部分に自分を入れていく」
「伝統を壊す意気で向き合わないと新しいものは生み出せない」との言葉が心を打ちました。
自分は自然科学に関係していますが、前田先生の言葉は科学の姿勢と全く同じで、科学は堂々たる伝統となっていることに改めて気付かされました。
自分も「叩き壊そうと思っても壊せない部分」と「変えていける部分」を自得できているか、自問していきたいと思います。また科学・工学の領域で、研究者の個性を如何に生かしていくか、R&D組織としての姿勢も問われているとも感じました。
その点、文化庁も含めた伝統工芸の世界は、前田先生を正当に評価するあたり、伝統の継承に関し立派な見識を持っている様子で喜ばしく思います。
■先日の三越での「白瓷譜展」で作品を鑑賞した後、前田さんのトークショーも拝聴したのですが、今回の講演も含め、つくづく作品に作り手の人柄が現れるものだな、と感心しました。全ての作品に共通するふくよかな面、光の陰影がもたらす暖か味、などは正に前田さんの“生きざま”そのもののように思えました。
二十歳の頃は「何の取り柄もない」青年が、「戦後30年、好きな事をやって飢え死にした人はいな
い。」との言葉に励まされて陶芸の道に入り、周りに先達のいない、鳥取という環境的には決して恵まれない中で、失敗を繰り返しながらも独自の作風を創り上げ、人間国宝にまでなった原動力が「“素直”と“続ける”の二つしかない。」と言い切るところが素晴らしい。そして今までの多くの失敗経験、山陰という環境、先生やお客の言葉、など全てが繋がり“60にして天命を知る”に至った、との言葉にも唸りました。
また「伝統」=「継承」ではなく「創作の連続」と言われたのは、今までの多くの講演者にも共通しているし、「完成度の高いものを敢えて壊して創り上げるが、伝統はそう簡単に壊せるものではなく、下手をするとこっちが壊される。」と言うものも、西陣織の細尾さんが「壊そうとしても壊れないのが伝統の強さ」と言われた事と重なり、思わず膝を打ちました。
*■前田さんの言葉の全てから、前田さんの絶対的な感覚、豊かな感覚、その感覚・センスに対する信頼が静かに、でも確固たるものとして存在していることを感じました。相対的なものではなく、絶対的な自分自身の感覚が自分の生きがい・アイデンティティとなっていることに、強い憧れを感じました。
特に、自分の感覚に基づいた白磁の定義のお話を聞いた時に、このことを強く思いました。(自分の感覚への信頼、白磁の定義への静かで確固たる思い)
あのように心の奥底からぽつりぽつりと出てくる言葉を久々に聞きました。本当に貴重な体験となりました。
*■前田さんの白磁の定義にあった「陰影」、「余白」があることで、見る人や見るときによって作品から感じ取るものが変わってきて、見る人と一緒に作品を作っているところが、ブランドに通じるものがあるのではないかと思いました。また、伝統は「昔から続いてきた」という価値があるために現代とそぐわないものでも「続けることに価値がある」と言われ若者が離れていくのではないかと思っており、なぜ自分は前田さんの白瓷に魅力を感じたのだろうかと疑問に思っていましたが、伝統とは技術の継承ではなく、あえて作り上げてきたものを壊して新しいものを生み出す革新であるという前田さんのお言葉に、腑に落ちるものがありました。
*■人間国宝の方の話を聞くことなどなかなか無いので大変貴重な経験をさせていただきました。芸術家は感覚とか勘のようなものでやってきた印象がありましたが、しっかりとした理論や思想が根底にはあると感じました。また、「期待通りに焼けたことはない」という言葉に驚くとともに、決して現状に満足せず、大きなビジョンに向かって、向上心を持ち続けることは、当たり前のようでなかなかできることではないことを長年続けているところに凄みを感じました。
*■個性の背景に現場の風土が出るという言葉はすごく納得のいくものでした。
自分は三重出身で、田舎出身のことにすごくコンプレックスを抱いていました。しかし、これも何かの縁であって、自分の個性に影響があって。また前田さんは自分自身だけでなく、その手から創り出された作品にも出ているわけで。軽く感じる出身も捨てたもんではないなと。
また、ディスカッションの際に、企業であっても工場長によって味が違うといったような、製品1つを取ってもやはり人が匂うものであるらしく、自分もその匂いを感じられる人間になりたいと感じた。
■思いの強さの大切さを、再認識しました。「思い」とは?と考えると、新しいことを自分で考えて、突き進むこと。その時に、素直さも忘れないでいることが大切だと、再認識しました。
普段、芸術に感動しないのですが、前田先生の作品は感動しました。
なぜかわかりませんが。。。よかったです。
*■先生もおっしゃられたように、心を動かす言葉がたくさんありすぎて、どれについて話そうか迷うくらいでした。特に心に残ったのは、展覧会にきたお客様の質問をきっかけに自分の環境の良さに気付いた、とおっしゃっていたところでした。前田先生がすんでいらっしゃったところは、客観的にみれば土や気候などの面で優れているということはなかったと思います。にも関わらず、その点に文句などを言うのではなく、自分のやりたいことをやり通し、結果として環境を良かったとさえ思われるようになった、というところに非常に感銘をうけました。この話を聞いて自分の環境にも、まだ気づいていないだけでなにか自分のやりたいことの手助けがあるのではないかと思いました。そして、環境のせいにしてなにもアクションを起こさないのではなく、自分のやりたいことをやり続けていれば環境がついてくることもあるということにとても勇気づけられました。
*■若い頃クリエティブさはあったが技術がなかった前田さんにとって、「過去の素晴らしい作品を研究しつつ自己流の作品を作るのにひたむきになった」という姿勢を見習いたいと思った
個人的には、エンジニアになりたく、「どうすればいいサービスを作れるのか」という疑問に参考になれば、と思って前田さんのお話を伺っていたが、過去の作品をじっくり見て研究すること、クリエティブさを持つこと、そして素直で継続することが参考になるだろうと感じた。僕はクリエティブさだったりアイデア出しが下手なので技術力を先に身につけようとしていたものの、過去の優れたサービスやアプリを研究することにも力点を置きたい。また、困難なことがあっても前田さんのように「素直に継続すること」を徹底すれば道は開けるのではないか、今回の講演を胸に精進していきたい