参加者の声 庭先紀代子氏

第2回   庭崎紀代子 セイコーウオッチ 常務執行役員、取締役
「Grand Seiko 世界への挑戦!」

■ セイコーのすばらしさを体感でき、感動しました。
粉雪の文字盤、ぐっときました。流れる秒針、たゆたう時にうっとりしました。
医療など高ストレス職場で働く人びとには、やさしく映ろう時の陰影をほっこりと感じられる時計は非常に魅力的です。自然光を纏った和の美GS、楽しみにしています。

■ 沢山の動画をご紹介頂いたが、それぞれコンセプトが明確で、素晴らしいものだった。1回の視聴で記憶に残るよう丁寧に企画・制作されていると感じた。
ブランディングはそれぞれやり方があるが、非常にチャレンジングな事例として参考になった。

■これまで担当者個人の思想や哲学をブランドとして具現化していく内容の講演が多かったのに対し、庭崎様は自己は抑えつつ個性的なチームメンバーを表に起ててブランドを育てている印象を受けました。極めて日本的なプロデュース方法のように思えます。現在の時計は明治以降の西洋からの技術を源流とするものですが、日本には江戸時代からの和時計の伝統も存在します。季節変化に応じる機構など、現在でも評価が高いと聞きます。日本人が自分の伝統に誇りを持てるような時計ができれば、ぜひ購入してみたいと思います。

■「常に時代の一歩先をいく」という創業以来の精神のもと、130余年、実に様々なイノベーションを起こしてこられた技術の歴史、将来に向けて感性価値を高めて勝ちをとろうとされていることなど、今回初めて伺いましたが、同じメーカーとして大いに共感しました。特に「日本を背負っていきたい」とおっしゃっていたのは印象的でした。GSを応援しなければですね。有意義なひと時を有難うございました。
(質問1)御社の事業の基盤となる職人さんの技術の伝承、人材育成は重要だと思いますが、どのようにされているのでしょうか。世代交代に伴う技術の伝承、後継者育成は弊社では課題です。よろしくお願い致します。

■講師の庭崎氏と紹介いただいたブランドに好意を持てる講演で、GSのファンになった。ただし、汎用性と再現性のあるブランド戦略策定の勉強のために受講しているので、もっと戦略の詳細や参考になる定量データを開示いただきたかった。(開示いただけなかったので)全くの当て推量ながら、日本市場で売れるスイスブランドの少なくとも一部は、訪日したアジアの新興富裕層や、昔ながらの日本の「その筋」の変動収入を得ている層に売れているのではないか。一方GSは、日本では三浦展氏の指摘する「シンプル族」や、海外ではMoMAのインショップの無印良品やプリウスのファンと重なる層から静かに支持を得ているのではないか。可能であれば今後Brandscape(仮称?)で、時計と自動車と洋服の間のブランド連関を明らかにして欲しい。
GSは、ぜひ急がず、しかし着実に、ブランドの熟成(と親ブランドからの分離)を進めて欲しい。

■典型的なデザインだが印象に残らないとのご意見を受けて、美しく、正確で、見やすいという時計の本質を細部にわたった突き詰めた結晶であるとのお話に創業者の精神が脈々と受け継がれていることに大変感銘を受けました。その一方で、グローバル化、ラグジュアリー化を進めるにあたって、完全に「Seiko」「Grand Seiko」の文字を外す、という議論はなかったのでしょうか?とても気になりました。

■備忘録的に記しますが
日本ブランドを世界に売り込む時に、徹底的に日本大使館を使い倒す
というのは一つの徹底戦略として有効だと思いました。特に
伝統工芸や食文化の延長として、日本のメーカーの匠の商品=高額商品には
大いに有効かと。
もう一つ、感性訴求については国内の(チョロい)消費者相手ではなく
世界、特にヨーロッパを相手に、高いレベルで行い、それを日本に
凱旋させる手法も大変有効かと。
結果、国内の営業部などから性能・品質を言え言え!!という圧力を
素敵に回避できるという僥倖があるかと。

■今時の若者と言われればそれまでだが、高級時計にはダイヤとかつけて意味不明に高くしてなんの意味があるのか…と毛嫌いしていた節がありました。ただ、日本の文化との融合、匠の技などを感じ、ほかのものとは一線を画した高級時計を感じた。ただ質問に出ていたように、フォルムや名前などまだまだここからというところなのだろうか。特に高級ブランドとして本気で愛するためには、ブランドというよりその一本を愛してもらうためにももっと愛したい工夫が必要なのかなと。例えば商品名を人の名前にして、その一本を人として愛してもらうとか?

■文字通り「時を刻む」ということにとことんこだわってこられた会社だということが伝わってきました。
振動数、針の動き方、視認性、ゼンマイの細さなど、マテリアルの面でのSEIKOの技術力の高さを間接的にでも知ることができ、はからくり好きの自分はとても興奮いたしました。ブランドとして打ち出し方について質疑応答のコーナーでも議論が巻き起こっておりましたが、ブランドを独立させることや、世界に”日本の価値”を訴求していくことの難しさに今まさに直面されていると感じ、これまでのMBFで拝聴したそれらに成功された事例とは違い、生意気にも自分だったらどうするかということを考えながらお話を聞けたことも面白かったです。

■講演時にも質問させていただきましたが、日本のブランドがそのカテゴリーの本場で、業界の人だけでなく一般の人にも認められるには、何が必要なのか、自社のこととしても考え続けています。
お答えにもあったように、日本の職人の技、特にその繊細さというのはよく出てくる回答ですが、その繊細さが買ってくれるお客様にとってどんな意味があるのか、もっと考えてみたいと思います。
ブランドを使用すること、身につけることで、どんなワクワクや喜び、幸せを感じてもらうことができるのか、それが本場のブランドと比べてどんな違いがあり、あえて選ぼうと思ってもらえるのか。少なくとも私は、機械式の精密さには興味がありません。おっしゃっていた感性価値を感じられるどうかが重要だと考えます。それはビールも同じ。日本のブランドが世界で評価されるためには、「職人」とか「繊細さ」(この2つが不要という訳ではありませんが)とかだけに頼ってはいけないと強く感じています。

■ハイエンドモデルの進化し続けるスペックを汎用モデルへ継承する手法を取られる考えをお持ちなのか?
お聞かせ頂きたく。

■私にとって「グランドセイコー」というブランドは、「セイコー」という親ブランドにぶら下がる、サブブランドの中のトップという位置づけ、というイメージしかありませんでした。例えばGMの中のキャデラックみたいな。それが昨年ブランドとして独立したと聞いて、驚きました。とは言え庭崎さんの肩書がセイコーウォッチ(株)の取締役常務執行役員なのですから、やはりトヨタのレクサスと同じにしか思えません。
それはさておき、モデル番号が究極を意味する“9”で始まる思い入れの強さや、ザラツ研磨で遠くからでもキラキラ光って目立つ、などの匠の技を駆使した作り込みなどは、海外の顧客にもアピールするのか疑問です。コアバリューである「正確・見やすい・美しい」は素晴らしいと思いますが、あまりに実直・質実剛健であり、これらは安いクオーツ時計でも十分達成可能なので、何かラグジュアリーブランドとしてもっとわかり易い唯一無比の付加価値がないと、中国製の偽ブランド品が出回ることも無いような気がします。
やはり憧れの高級ブランドになるためには魅力的なストーリーが必要で、だからこそ後発のロレックスが月面着陸時に使われた事で、確固たるブランドイメージを築けたのだと思います。
セイコーは正にその1969年に世界初のクオーツ時計を発売したのですから、その辺りを原点にして世界が納得する素晴らしい物語が紡げないものでしょうか。